ギリシアの科学はすごい (No. 784)

date 2023 08 05
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先週はギリシア神話の話でしたが、古代ギリシアの自然科学もすごいです。
ピタゴラスという名前はご存じでないでしょうか。彼は古代ギリシアの科学者です。
ピタゴラス学派のみなさんの数学の知識は私たちが現在習う幾何学より遥かに高度だったと思います。
また、球の美しさを知り、自然界の中でもっとも重要な形であると信じていました。
なので、地球が球形であることを自然だと思っていました。
結果として、
月食の説明は現在の私たちと同じように正しくできていました。

エラトステネスは地球の直径を図1左のような方法で求めています。
得られた値は現在の測定値とほとんど一致していて、びっくりです。
少しやり方を説明すると、
夏至の日、シエネの町(現在のアスワン)では太陽が頭上に来ることが知られていました。
そこで、
アスワンからナイル川にそって下流のアレキサンドリアで夏至の日の太陽の高度を測定します。
その角度(360度の50分の1)のとアレキサンドリア・シエネ間の距離(南北方向約790km)から地球の周が求められるという作戦です。

もし、地球が平板だという考えだと図1右の図から、地表から約6300km上空に太陽がいることになります。
全く同じデータから違った答えが出てくるのが面白いですね。

ピタゴラス学派の人やアリストテレスは地球を中心において球形に何層かの軌道を準備して、地球に近い方から
月、太陽や惑星、恒星の順に並べた宇宙を考えました(図2)。
これは当時の正統派です。
しかし、アリスタルコスというひとは、太陽を中心においてその周りに地球が公転しているという意見でした。
エクバントスというひとは、星が動くのは天球が回るのではなくて地球が自転しているための見かけの運動だといいました。

正統はではなかったけれど、デモクリトスは物質を細分化していくと原子にたどりついて、
地上の物質だけでなく、月や太陽も原子からできていると考えていました。
この考えだと原子と原子の間の空間は真空になってしまうため、
自然は真空を嫌うという当時の自然観とは対立するため異端とされました。
現在のサイエンスだとデモクリトスの考えが正しかったということになりますが。

こうして色々な人がいろいろなアイデアを出して現実に合うものを探していくが
サイエンスの面白いところです。
面白いアイデアが並列して存在できたのは素晴らしいことでした。
古代ギリシアが一つの国家で統一されるのでなくて各都市が自由で、
多様性を認める性質があったのが良かったのでしょう。
現在の私たちもここから学ぶところがありそうです。







図1 太陽の見かけの方向から何がわかる? http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/784-fig1.jpg
図2 アリストテレス的な宇宙像 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/784-fig2.jpg
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