アラゴの円盤 (No. 800)

date 2023 11 25
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日常生活で力を加えて物を動かす時は、そのものに直接触れることになります。
ハンドルを持ってぎゅっと回す。
車のタイヤが路面を蹴って進む。
いずれも直接の接触が欠かせません。

ところが、そうでもないという実験を図1のようにしてみました。
爪楊枝の頭のつるつるしたところにアルミホイルの小片を載せます。
軽い方が良いので台所にあるのではなくて、チョコレートを包んでいるような薄くて軽いのが良いです。
次に強力なボタン磁石(ネオジム磁石がよいです)。
なお、鉄と違ってアルミは磁石にはくっつきません。
磁石を糸で吊るします。縫い糸でもいいと思いますが、私はそれより軽い髪の毛を使いました。

図のような状態で糸を捻って磁石を回転させます。
するとアルミ片が不思議にも回転を始めます。
逆に回せば逆回転です。
磁石とアルミホイルは全く触れておらず、離れています。
アルミと磁石の間は真空でも構いません。
発見者の名前にちなんでアラゴの円盤と呼ばれる現象です。

お部屋の中でできる簡単な実験ですが、同様のことが宇宙でも起こります。
星は地球も太陽もそうであるように磁石になっていますから、
磁石になっている星が回転すると周りのガスも回転するような力が働きます。
ブラックホールの周りの回転するガスや星が誕生する時の赤ちゃん星の回転では
回転軸方向に高速のガスの噴出が観測されています。
図2のように中心に回転する磁石を考えると周りのガスが回転し、回転による遠心力で
ガスが遠方に向けて吹き飛ばされると予想されますね。
このようなことがブラックホールの周りや赤ちゃん星の周りで起こっていると思われています。

真空中でも力が伝わったわけですが、
このことは、真空というのは何もない空間ではなく、その中に何かが含まれていることを示唆しています。
その何かを「場(ば)」と現代物理学では呼んでいます。




図1 磁石の回転を伝える実験 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/800-fig1.jpg
図2 回転する天体の周りで起こる回転とジェット現象 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/800-fig2.jpg
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