夏の大三角形

梅雨も明けたのか明けないのか、夏になったのかも
はっきりしないまま、秋の空気を感じるこのごろで
す。夜空は真夏の太陽がギラギラ輝くころのあの夜
の星空になっています。夜空は天候と関係なく、確
かに夏の空になっています。うす曇りでもかまわな
いで夜空を見てみましょう。

夜の8時ころ外に出てみます。真南を向いて、頭上に
目をやるととても明るい星がまず目に入ります。頭上
ですから絶対に間違えるはずはありません。これは、
こと座のベガ(おりひめ星)です。そこから東へすこし、
「左手」を伸ばして高くあげ、手のひらをパーのように開
いて、親指がベガにあたるようにすると小指のあたり
に明るい星があります。人によって、腕の伸ばし方に
よって少しかわりますが大体そのあたりに明るい星が
見つかるはずです。それが、はくちょう座のデネブで
す。頭上のベガからこんどは地平線へ真南に下りてい
って、やや東よりにまた明るい星が見つかります。ベ
ガからの距離はさっきのデネブよりも大きいです。こ
れは、わし座のアルタイル(ひこ星)です。

以上、三つが夏の大三角形です。あらためて全体を眺
めてみると、たしかにこのあたりでは一番明るい三つ
の星です。 (南東のそら低めの位置にベガよりもはる
かに明るい星が気にかかると思いますが、これは木星
です。)

夏の大三角形の三つの星は空の天井に貼りついて三角
形に並んで見えますが、デネブが遠くにあるため宇宙
空間では非常にゆがんた形の三角形です。地球からベ
ガまでの距離が約25光年、アルタイルまでが17光年に
たいして、デネブまでの距離は約1800光年もあります。
これはベガまでの距離の72倍です。ですから、もしベ
ガがデネブの位置にあったとすれば、その明るさはい
ま私達が見ているものの72の2乗分の1、つまり、
5184分の1になります。とても暗くて肉眼で見ること
はできません。逆に言って、もしデネブがベガの位置
にあったとしたら、 5184倍の明るさに見えますから、
金星のように明るい星と見えるでしょう。

星までの距離を感じながら夏の大三角形をお楽しみください。


図1 夏の大三角形
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/96-fig1.ppt
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図2 三つの星の距離感(デネブまでの距離を18センチメートルと
すると、ベガまでの距離は 2.5ミリメートルです)。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/96-fig2.jpg
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