宇宙の組成(1)

この宇宙に炭素や窒素や酸素があって、そのおかげで、
私たちのからだはなりたっています。また、鉄がいっ
ぱいあって様々な物をつくることができました。元素
がこの分量あるのは神さまがそうしたのだ、としか大
昔は考えることしかできませんでしたが、今では、こ
の元素がこの宇宙にどういった理由でどのくらいの数
存在するのかを説明できるようになってきました。い
ろいろある金属の中でなぜ鉄が多いのだろうとか、炭
素や窒素や炭素がなぜたくさんあるのだろう、どうし
て、この割合なのだろう、などかなり細かなことまで
分かるようになって来たのです。やっぱ、科学の発展
はすごいことだな、と思います。このシリーズもまも
なく100回をむかえます。ちょっと込み入った、このよ
うな話しもときどきしたいと思います。


さて、元素の中では、水素がもっとも多く存在します。
これは気がつきにくいことですが、「水」などの化合
物の中にたくさん水素が含まれているのです。宇宙の
中でもっとも多い元素は実は水素とヘリウムです。

宇宙の始まり(およそ137億年前)のとき、水素とヘリウ
ムはおよそ12対1の割合でした。図1で「あおばたまめ」
で表されているのが水素原子です。コヒー豆で表されて
いるのが中性子という粒子で、ヘリウム原子は、コヒー
豆二粒と青葉豆二粒でできています。赤い紐でまとめら
れています。

突然ですが、図2は空気が上空にいくにしたがって薄く
なる様子を表しています。大体、6km上るごとに1立方
メートルに入っている酸素量は半分になっていきます。
12km上空だと4分の1、18km上空だと8分の1といった
具合です。このような関係は、例えば、星の明るさは
一等級あがるごとに2.5分の1になるとか、音の振動数
は1オクターブさがるごとに2分の1になるとか、い
ろんな場所で表われる関係です。

上空に行くほど位置のエネルギーが大きくて、位置の
エネルギーと温度によってどれくらい酸素が減ってゆ
くかの割合が決まって来ます。

ちょうど宇宙で水素と中性子ができたときの温度とお
互いの持っているエネルギーの違いを考慮すると水素
と中性子、つまり、「あおばたまめ」と「コヒー豆」
の数が7対1であると計算され、結果として、図1の
ような割合で水素とヘリウムができます。

これらを材料にしてやがて酸素や鉄ができるのですが、
それはまたこんどお話することにしましょう。

以下のパワーポイントファイルがふたつの図に対応します。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/99-fig.ppt

図1 宇宙が誕生したときの元素組成。あおばた豆が「水素原子」で
コーヒー豆が中性子です。水素原子は同時に陽子とも言えます。
陽子ふたつと中性子ふたつが複合してひとつになったものが「ヘリウム原子」です。
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図2 高いところほど、エネルギーが高く、空気は薄くなり、原子の数も現象
します。同じように、陽子にくらべて中性子はエネルギー的に高い位置にあるので
数が少なくなります。
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