「宇宙の果てはどうなっているんですか?」とか、「宇宙 に果てはあるのですか?」という質問をよく受けます。こ れがなかなか難しいのですが、そもそも「果て」を考える こと自身「ハテ?」という感想をいただくこともあります。 星空を見ていてもまったく遠近感がありません。なので、 太陽の回りを地球が回っていると言うところまでは立体的 あるいは空間的に考えることはできるのですが、星空まで 立体的にイメージするのは簡単ではありません。図1のよう な感じです。星空は天球の膜の上に描かれているようなも のですから、その中で「果て」という考えがそもそも無い と言うわけです。
星座を作っている星にもそれぞれ距離があって奥行きとい うのが実際はあります。たとえば冬の星座で有名なオリオ ン座であれば、三つ星は地球から千五百光年くらいの距離 にありますが、オリオンの右肩のベテルギウスという赤い 星は三分の1の五百光年とずっと近い距離にあります。ち ょうど板こんにゃくの黒いつぶつぶがひとつひとつの星の ように、星座を作る星たちは空間にぽっかり浮かんでいま す。その空間のひろがりがどこまでつづいているか、とい うのが宇宙の果ての問題です。
しかしこれで分かったつもりになってはいけません。たと えば、1億光年かなたの銀河を見たとしましょう。それは現 在の姿ではありません、一億年まえの姿です。図2は、上に 行くほど時間が進み、下に行くほど過去になり、原点から右 または左に行くほど現在地点から空間的に遠ざかるように描 いた図です。原点から水平に右に進んで、現在における一億光年か なたの銀河は見ることができません。望遠鏡で見えるのは光 の進んで来た経路である斜め下に向くピンク色の線の上です。 こんにゃくを見ているとき考えた宇宙の果ては空間的な果て、 つまり、図2の水平な線の延長上です。望遠鏡で宇宙の果てを 見るときは、ピンクの線の延長上です。このピンクの線にそ って宇宙の果てを探すことになります。宇宙の果てというの は空間的に離れるだけでなく時間的には過去にもどっていく ことです。斜め下のほうが「果て」なのでしょうか。
宇宙は膨脹しています。なので、宇宙はむかし収縮していた ことが知られています。図2でピンク色に沿った宇宙の果て、 つまり「ハ」の文字の先と時間軸の過去の極限、白い「テ」の 文字の先の方は、ずっとのばしてゆくといずれ合体します。 みなさんが知りたかったのは、現在における果て(水平に右 の果て)ではなかったですか。ハテ? 果てといっても簡単に 考えてはいけないようですね。
このことは忘れてこんばんはゆっくりおやすみください。