はくちょう座 X-1

はくちょう座は、美女として知られるレダに近づくために大神ゼウスが白鳥
に化身したものという神話が残っています。この話を
別にしても大きな羽を広げたはくちょうの姿はとても
美しいものです。長い首と翼がちょうど大きな十字形
をつくるので、南十字に対比させ、北十字とも呼ばれ
ます。星空案内をしていて、その大きな十字を説明
すると歓声があがることもしばしばです。

今週は夜の9時前後に夜空を見あげると、ちょうど頭
上に大きな十字形のはくちょう座を見ることができま
す。 (図1)

光ではなくX線を感じる装置を使って宇宙からやって
来るX線をとらえることは、1962年にロッシとジャコ
ーニによってはじめられました。「X線を出す星はあ
っても非常に弱いので簡単には見つからないだろう」、
というのが当初の予想でしたが、実際に観測してみる
ととても強いX線を出す天体がつぎつぎに見つかって、
大騒ぎになりました。X線天文学の誕生です。この時
期、日本で開発されたすだれコリメータという装置が
X線星の位置や大きさの測定に活躍したという誇るべ
き歴史があります。

最初に発見されたいくつかのX線星のなかのひとつに
「はくちょう座Xー1」というのがあります。ちょうど白鳥の
首の中ほどにあります。この位置を光の望遠鏡で見る
と青白い巨星と呼ばれるタイプの星があり、それがぐ
らぐら5.6日の周期で揺れ動いています。現在では、
図2のように、この巨星とプラックホールが互いにぐる
ぐる回っているのだということが分かっています。ブ
ラックホールのなか巨星の外層が吸い込まれるとき、
互いに強くぶつかり摩擦をお越しながら落ちてゆくの
で、高温になりX線が出ていたのです。こんなも物語
も思い出しながら、美しいはくちょう座の姿を今晩は
愛でてはいかがでしょう。

図1(はくちょう座Xー1)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/export/12-fig1.ppt


図2 はくちょう座Xー1の正体はブラックホール(右)でした。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/export/12-fig2.jpg