100億光年もの彼方の天体が見つかったといったニュースがときどき流れます。 いったいどのようにしてこんな遠くの銀河までの距離を測ったのでしょう。
まず、私達には信念があります。それは地球上で私達が知った物理学の法則と いうのは地球独特のものではなくて、宇宙のどこでも同じ物理学の法則が成り 立っているという信念です。地球中心主義は、地動説、つまり、地球は宇宙の 中心ではなくて、地球は太陽の回りをまわる惑星のひとつにすぎないということ を知ったときに崩壊しました。
たとえば、ナトリウムが発光するという現象を考えましょう。ナトリウムは独特 のオレンジ色の光を出します。これはトンネルの中の照明に利用されていて、 みなさんもトンネルの中や、街灯の光としてこのオレンジ色にはなじみがある のでないでしょうか。100億光年彼方の宇宙のどこかで、もし、ナトリウムが 存在すればはやりおなじオレンジ色の光を出すはず、と考えます。100億光年か なたの世界でも、ナトリウム、さらに、炭素や酸素といった原子が存在し、 光も存在し、それらは物理学の法則にしたがって作用しあいます。 ということで、非常に遠くにある銀河にもいろんな原子があって独特の光が 発せられます。
それを地上で観測すると面白いことに気がつきます。たとえば、ナトリウム からは589ナノメートルの波長の光が出るのですが、観測してみるとその 波長が長く見えるのです。これはドップラー効果といって光を発した銀河が 私達から遠ざかるように運動している証拠となります。音のドップラー効果は、 救急車のサイレンが遠ざかるとき低音に聞こえるということで体験している ことです。
1929年、ハッブルは銀河の遠ざかるスピードと銀河までの距離が比例することを 発見しました(図1)。これはハッブルの法則とよばれています。
いったんこの法則が見つかってしまうと、距離が分からない銀河があっても そこからの原子の光をとらえればドップラー効果が見つかり、後退スピードが もとめられ、図1のグラフを使ってその銀河までの距離が推定できます。 非常に遠い銀河までの距離はこうして見積もられています。