はやぶさの道のり


幾多の困難をのりこえて無事に地球に帰還した惑星探査機「はやぶさ」は 非常に話題になりました。小惑星「イトカワ」という天体まで行って、 そこに着陸(タッチダウン)し、サンプルを採取し地球に持ち帰るという 技術的には非常に難しいことをなしとげたのですから凄いです。しかも、 途中、通信が途絶えたり、エンジンが動かなくなったり、様々な問題を 地上からのコマンドひとつで解決してきた技術には拍手喝采です (図1参照)。

その飛行距離はおそらく60億kmくらいになるとおもいます。ちょっと想像が つかない長さですね。太陽の回りを回る地球の軌道の直径は約3億kmです。 小惑星「イトカワ」は、地球と火星の軌道のあたりを回っています。 火星の軌道の直径は約4億5千万kmです。

「はやぶさ」は地球と「イトカワ」の間の非常に長い隔をつないでくれた のですね。しかし、私は「はやぶさ」がつないでくれたのは長い距離でなく 長い時間だと思っています。

おかあさん、おばあちゃん、ひいおばあちゃん、と3代くらいの時間をさかのぼると 明治時代にもどることができるでしょう。30代、つまり、学校のひとクラス の人数分くらい昔にさかのぼれば、戦国時代に行くことができます。 百人分も時代をさかのぼれば、やっと日本の国ができたかできないかくらい昔に 行けます。

一万人分さかのぼれば、もはやその人は人類か猿かどうかがあやしくなりはじめます。 東京の人口分くらい、さかのぼれば、恐竜さんの祖先になっているでしょう。

そして、2億人分もさかのぼった46億年前は、もはや生き物もなく、地球もなく、 宇宙空間に岩石が飛び回る世界にたどり着きます。そんな世界で作られた小惑星 「イトカワ」は約45億年の眠りからゆすり起こされました。45億年前の「イトカワ」 から細くて長い長い糸を引いて戻ってきたのが「はやぶさ」だと、私には思えます。

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図1 (素材画像 JAXA 提供)
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図2 太陽系の歴史
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