「かぐや」が月へ 9月25日(旧暦8月15日)の仲秋の名月は御覧になったでしょうか? 私はちょうど日本天文学会に出席のため岐阜を訪れており、 山のいただきに建てられた岐阜城の上にぽっかり昇って来 た十五夜の月をながめて戦国時代のことなどを思いめぐら しておりました。その話をしたら、同僚は、先日、9月14日 に種子島宇宙センターより打ち上げられた日本の宇宙船 「かぐや」が飛んでいる姿を思い浮かべたようで、ずっと 私より科学者らしい発想だと感心してしまいました。 (図1) 「かぐや」は日本が打ち上げた月探査宇宙船です。 竹取物語の最後にかぐや姫が故郷である月に帰って行く お話に因んだ命名です。 現在順調に飛行を続けていて、10月4日には月に到着し、 月のまわりを回る軌道に入る予定です。そして、 上空から月の岩石の組成を調べたり、 月の引力から月の内部の様子を調べたりします。 「かぐや」の重要な目的のひとつは月がどのようにしてできた かを解明することです。現在、もっとも有力視されているのは、 巨大衝突説です。 地球ができる前のことです。太陽の回りを回る小さなたくさんの 岩石(微惑星)が衝突合体し、現在の地球よりやや小さめの原始惑星が できました。そして最後に、ふたつの原始惑星が大衝突したのです。 この衝突でふたつが合体し地球が誕生しますが、その破片が飛び散り 生まれたばかりの地球のまわりを回ります。破片の多くは地球に落ちますが、 一部は地球のまわりを回りながら衝突合体をくり返し、やがて月になったと 言うのです。 (図2) 旧暦9月のお月見は、十三夜を愛でる習慣が日本にはあります(栗名月)。 今年は 10月23日です。月を見ながら月を周回する「かぐや」 を思い出してください。 図1 かぐやの打ち上げ (JAXA提供) (トリミングして使用下さい。) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/14-fig1b.jpg 図2 月のでき方 (1)巨大衝突、(2)合体して地球ができ、破片が地球のまわりを回る、 (3)破片が合体して月ができる。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/14-fig2.jpg