九月二十二日から三日間、金沢大学で天文学会が開催され研究成果を発表し ていました。二日目の懇親会で研究仲間に呼びとめられて、「カニが突然二 倍明るくなったらしいぞ。」 カニとはカニパルサーのことで私の研究対象の星のひとつです。おうし座に あります。地球と同様に自転していますが、一秒間に30回も自転する特殊な 星です。半径は10キロメートル程度で非常に小さい星ですが、非常に強い磁石 になっています。星からはビーム状に光が出ていて、それがくるくる回るので、 ちょうど灯台のように、その星を見ると点滅してみえます。点滅周期は当然 自転周期で、一秒間に30回です。 その、ビーム光が突然2倍の明るさになったと言うのです。人類の観測が始まって 以来こんなことは一度もありませんでした。いったい、何が起きたのだろう。 みんないぶかしげです。でも、観測が専門の天文学者は懇親会の中でも 世界中の天文台と連絡をとりながら世界の望遠鏡を「カニ」に向ける準備を していました。私は理論家なのでその理由をあれこれ考えていました。 では、山形説をご紹介しましょう。パルサーと言う星は地球と同じ様に磁石 になっています(図1)。これが回転すると磁力線は遠心力を受けて外に向けて 非常に強く引っ張られます。そしてとうとう一部の磁力線はちぎれて宇宙に 広がり、なんとか切れずに持ちこたえた磁力線は図2の赤い線のようにつながって います。この状態が普通でこれはこのままの状態を保っていると考えられて います。 しかし、なんらかの理由である磁力線がちょっと引っ張られると、強い遠心力 を感じでさらに引っ張られ、すると突然図3のようにぷっつり切れてしまう でそう。輪ゴムが切れるときはその「ぶちっ」という音が出るように、磁力線 のときは強い光がでると思われます。この現象が起きたのではないかと言うの が私の想像です。 半年もすれば観測がしっかりされて、あっさりこの説は否定されるかもしれま せんが、半年間はわくわくしながら楽しむことができそうです。なんだか宝くじ 勝ったときのようですね。 |
画像をクリック(拡大) 図1 パルサーは地球のように磁石になっていて、高速に自転しています。 3枚の図をまとめたパワーポイント http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/145-fig1.ppt http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/145-fig1.jpg 画像をクリック(拡大) 図2 磁力線が遠心力で引っ張られてちぎれる。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/145-fig2.jpg 画像をクリック(拡大) 図3 ぷっつり現象が起こったのかもしれない。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/145-fig3.jpg |