万物は浮遊する


水は液体ですが、冷やすと固体の氷になります。加熱すれば気体の水蒸気 になります。温度の上昇にともなって、固体、液体、気体へと変化します。

お湯が沸騰して「湯気(ゆげ)」が白く見えますが、これは水蒸気が冷えて 小さな水滴、つまり、雨粒の非常に小さくなったようなもの、空の雲のように なったものです。これは液体の小さな粒であって、水蒸気とは違います。 水蒸気は空気と同じように透明で目で見えるものではありません。 湿度50%とかいいますが、目には見えなくても空気中に気体としての水、 つまり、水蒸気がふくまれています。

ここにだいじなポイントがあります。全ての物質は温度を上げるとやがて 気体になってしまうと言うことです。岩石は固体ですが、加熱すれば熔けて 火山の噴火でおなじみの溶岩になります。鉄も通常は固体ですが、1500度くらいで 熔けてしまいます。さらに、高温になると、溶岩も鉄も気体になってしまいます。 加熱すると燃えて最後に煤(すす)が残るような気がしますが、煤をどんどん加熱すると それも気体になり、あとかたもなく消えてしまいます。全てが気体になったのですね。 空気と区別つきません。もし、気体の鉄を吸ったら、肺のなかで冷えて固まって 鉄粉になるかもしれません。

すべての物質は原子や分子とよばれる極微の粒子からできていますが、その粒子が 凝縮して固まった状態が固体、すこし、固まりがゆるんだのが液体、そして、 原子や分子がひとつひとつばらばらになったのが気体です(図1)。

宇宙空間の大抵の場所は高温で希薄です。その中では原子はバラバラで、気体に なっています。岩石も鉄も全て気体になっています。人間の身体を 作っている蛋白質も、そこでは水素、酸素、炭素、窒素などの気体となって 漂っています。全ての物は気体となって宇宙をさまよっています。

宇宙の気体が万有引力で集まって密度が高くなると放射を効率良く出して冷えて ゆきます。どんどん温度が下がって、いままで気体だった岩石や鉄が固体の小さな 粒になります。小さな砂粒のようなものができます。それが宇宙のダスト(ちり)とよば れるものです。図2の星雲の写真で黒く見える部分はその様なダストがあつまった 雲です。ここは密度の高い冷たい雲です。雲の中心部は太陽のような星になりますが、 その回りのダストから地球のような惑星がつくられていきます。

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図1物質は温度を上げてゆくと固体、液体、気体へと変化します。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/167-fig1.jpg
原画
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図2 星雲にみられるダスト(黒い部分)(提供:NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/167-fig2.jpg