旧暦と新暦


今月は1日が新月、15日が満月です。 旧暦は「ついたち」が新月と決まっていますから、今月は珍しく、 旧暦と新暦の日にちが一致しています。 月の名はひとつずれています。なので、新暦7月18日は旧暦で 6月18日となります。

今月は旧暦と一致しているので、たとえば15日なら満月が出るな、 とか、今日は18日だから月がでてくるのは夜8時すぎでだいぶ遅いなと 考えられます。応用としては、夜にデートするときは、月の後半は月明りがないので、 電気のない時代なら、これからしばらくは夜に家を抜け出してデートするわけにはいかないなとか 考えられます。ちょっと旧暦生活の疑似体験ができそうです。

7月31日にはふたたび新月に戻るため、この日は旧暦で7月1日となり、 8月に入ると、新暦のひにちと旧暦の日にちはずれてしまいます。 あとはずれる一方で、しばらくの間、新暦の日にちと旧暦の 日にちは一致しません。今度一致するのは、2014年1月です。 一致するのは珍しいことのようですね。

図1を御覧いただくとずれの原因がわかるのでないでしょうか。 7月31日が新月で旧暦7月1日となり、ここでずれます。 月の満ち欠けの周期は実は29.5日で、ひと月の長さを 29日と30日を交互に繰り返すと、月の満ち欠けと日づけが ほぼ一致しします。 一方、 わたしたちが今使っているカレンダー(太陽暦)は 30日と31日を基本的に繰り返すので、どうしても旧暦のひと月は 短くてずれてしまいます。

旧暦を使った暦を用いると、月の周期が29.5日でこれを12回くりかえすと、 254日でになります。旧暦の一年は365日に11日だけたりません。 図2は太陽の回りの地球の公転運動を示しています。一周が一年で、これが季節の 変化の周期です。旧暦を使っていると12ヶ月たっても 地球は元の位置に戻って来ないことになります。 そして、3年経つと33日のずれ。つまり、ひと月以上もずれてしまいます。 旧暦では このずれを防ぐため、ときどき閏月(うるうづき)を挿入し、一年を13ヶ月にしています。 これが太陰暦に太陽暦の考えを混ぜた、太陰太陽歴で、一般に旧暦と言っているのは このような暦です。

図1 7月の暦
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図2 太陰暦の12ヶ月は354日しかないので一年には11日不足する。
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物語の星探し


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夜空での星探しも楽しいのですが、こんな星探しも楽しいかもしれません。 「とんと昔のおくりもの」という山形の昔話を紹介した本 (とんと昔のおくりもの編集委員会編、山形教育用品株式会社発行) にこんな話がありました。

むかし、出羽の役人になった父をたずねて都からはるばるやってきた 玉虫という名の娘がいたそうです。たいそう疲れ果てていたので しばらくのあいだ山辺(やまのべ:現在の東村山郡山辺町)の お城で奉公することになりました。 「玉虫の炊くご飯のうまいこと、香りがよいうえに、柔らかさかげんは 絶品じゃ。」と殿様からずいぶんと喜ばれ、かわいがられたそうです。 しかし、ねたむものも多く、つらいこともたくさんありました。

ある日、ちょうどご飯が炊きあがりかけたとき、夕立が突然やってきて、 玉虫は大急ぎで洗濯物をとりこみに外に出ました。そのすきに別の女中 が釜のふたをあけてびっくり、そこには蛇が入っていました。 うまいと評判のご飯は、実は蛇ご飯だったと、大騒ぎになりました。 玉虫はじつは蛇の申し子ではないか。玉虫へのいじめが最高潮に達します。

玉虫はとうとうお城を抜け出して、星明かりを頼りに山の奥へ奥へと 進みました。すると、目の前に大きな沼があらわれました。玉虫は 立ちどまり、天を仰ぐと降るような星の中に、一つだけ輝きを増した 星を見たそうです。「お父さま、わたくしもすぐにおそばにまいります。」 そう言って、玉虫は沼の真ん中めがけて歩き進み、やがて見えなくなってし まったそうです。

月の光に照らされたこの沼の底には今も玉虫の姿がみえることがあるそうです。 山辺の人はこの沼を「玉虫沼」と呼ぶようになったそうです(図1)。

さて、玉虫が見た一つだけ輝きを増した星とはどの星なのでしょう。 まず、夕立とありますから、季節は夏です。次に、山辺のお城は、1451年に 山辺町大蕨に築城されたということなので、図1のように大蕨から 沼に向かったとすると地形上、玉虫は南に進み、沼の北側に到着したと思われます。 眼前に見える沼に、玉虫を沼に引き込むように輝く星というイメージだと 真上にある星ではなくて、水面の上にみえる明るい星、つまりは、赤いアンタレスと いう一等星(さそり座)がもっともふさわしいように思えます(図2)。

いろんな星の出てくる物語を読んで、その季節、その場所に行ってみて、 どの星なんだろうとか、そのときの主人公の気持ちはどんなだっただろう と味わってみるのはどうでしょう。



図1 玉虫沼(東村山郡山辺町)
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図2 1500年8月8日午後8時の南の空を沼の岸からながめたイメージ図
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