新しい天体(フェルミバブル)


新しい望遠鏡ができて、それを宇宙に向けると、きっと新しい天体、これ までに想像もされていなかったとんでもない天体が発見されるものです。 スペースシャトルによって打ち上げられ、2008年8月から運用を開始した 「フェルミ宇宙望遠鏡」もどうもそのようです。

「フェルミ宇宙望遠鏡」は、宇宙からやってくるガンマ線とよばれる エネルギーの高い光を観測しています。これまでにたくさんの天体を調べて 来ました。予定されていた天体の観測は順調に進みました。たとえば、 パルサー、活動銀河、超新星残骸、宇宙線に照らされて光る星間雲などの 天体です。だいぶ観測が進んで、これらの知られた種類の天体の光を差し引くと 残ったかすかな光の中に、とんでもない新天体が姿を現わしました。

わたしたちの太陽系は、銀河系と呼ばれる二千億もの星が集まった円盤のなかに あります。その星たちは天の川として見えます。その天の川銀河の中心で どやら大爆発があったようです。フェルミ望遠鏡が捕えたガンマ線 の画像を見ると銀河系の中心から上下に広がってゆく一対の巨大なバブル(泡) があるようにみえます。 バブルの直径は2〜3万光年にもおよびます。 図1は浮かびあがって来たガンマ線の像、そしてそれを解釈した説明図が 図2です。

このバブルが放出しているエネルギーは太陽の一万倍くらいです。 このエネルギーを人間の活動と比較するのは意味が無いかも知れませんが、 例えば、東北電力が供給する電力の10億年分を毎秒放出している計算になります。

この大きなバブルは、発見した望遠鏡の名前に因んで「フェルミバブル」と 呼ばれますが、その原因は分かっていません。銀河系の中心にあるブラック ホールからのジェット流だとか、爆発的な星形成がむかし銀河中心に起こった とか、暗黒物質が消滅したとか、いろいろな説がありますが研究はこれからです。 また、研究の楽しみというバブルが今年もはじけそうです。


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図1 フェルミガンマ線望遠鏡で見た背景にある弱いガンマ線の画像
(NASA提供)
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/196-fig1.jpg

図2 フェルミバブルの想像図
(NASA提供)
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http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/196-fig3.gif

図のパワーポイント
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/196-fig.ppt