かに星雲 中国の古い天体観測の記録に「客星(かくせい)」という 分類があります。これは、お客さんのようで、今までな かったところに突然星が輝き出しやがて消えて行く現象 を指します。ほうき星もそうですが、現代天文学で言う 「超新星」という現象もこの客星の仲間です。 西暦1054年におうし座の方向に超新星が現れました。 平安時代のことです。藤原定家の「名月記」にも記載さ れていて、木星のように明るく輝いたそうです。そして その星はやがて消えてゆきました。まさに、お客さまで すね。その超新星が現れた場所を今見ると写真1のように 星が爆発して飛び散った様子がみえます。爆発したガス は毎秒2千km から3千kmのスピードがあり、およそ千年か かって写真1のように数光年まで広がったのです。 このように超新星爆発の跡は輝くガスの雲を残すのでこ れを「超新星残骸」と呼んでいます。写真1の超新星残 骸は「かに星雲」というニックネームでよばれています。 赤い筋のような光がカニに見えたからそう呼ばれたので しょう。 この「かに星雲」をX線望遠鏡を使ってみたのが写真2です。 円盤のような光と、円盤を垂直につらぬく光の筋(ジェット と呼んでいます) が見えます。なぜ、この様な姿に見えるか は謎で、私たち山形大学でもこの「かに星雲」の光について 研究しています。いままでに、「かに星雲」のなかにはかな り乱れた磁場があり、この磁場のなかにある高エネルギーの 粒子からこの光が出ていることが突き止められています。 とはいうものの、忘年会のシーズンになり、「かに星雲」の 話をしているうちに、おいしい蟹料理が食べたくなりました ね。 図1 可視光でみた「かに星雲」 (提供 国立天文台 ハワイ観測所 すばる望遠鏡) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/23-fig1.jpg 図1 X線でみた「かに星雲」 (提供 NASA チャンドラX線望遠鏡) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/23-fig2.jpg