春分点


太陽が西に沈む頃、ちょうど春分点が見ごろを迎えているので ご紹介しましょう。 春分点といってもそこが光って星のように見えるわけではありません。 単なる仮想的な点です。しかも、これから冬を迎えようとするときに春分 だなんて、と思われる方も多いのではないでしょうか。

まず、春分点の場所ですが、午後6時頃、東の空を見ると図1のような星空 が見えます。緑の○でかこった4つの星、秋の四辺形が見つけられます。 その東側の太陽のマークがある場所が春分点です。 「うお座」の方向です。 星ではない仮想的な点なので、図を見ながらあの辺だなと心に描きながら見るしかありません。

この春分点を見ている皆さんの背中の方向、西の地平線のすぐ下に太陽があります。 つまり、太陽は春分点とは反対の方向に今はあるわけですが、これが日に日に近づいていき、 やがて来年の3月20日の春分の日には春分点に太陽が到着します。 春分点とは太陽が春分の日にある場所であり、この太陽は真東から上ってきます。

春分点をしっかり定めておく事は古くからとても大切で、仏教ではお彼岸の 日を定めるために、キリスト教では復活祭の日を定めるときに必要です。

お恥ずかしい話なのですが、春分点が現代の天文学者にとってもとても大切だと いうことに最近気がつきました。

星の位置を測量するとき地球の公転運動を利用した方法があります。 図2では地球が太陽の周りを公転していますが、 この公転面を天に投影したものが黄道(図1の黄色い線)で、 太陽から見て、地球の自転の方向(北極星の方向)と直角をなすのが 春分点の方向です。 星の位置というのは、軌道面(黄道)を赤道に見立ててそこからどれだけ 離れているかを緯度として表し、春分点から軌道面にそってどれだけ回っているかを 経度として測定されます。

そして、図2のように春分点の方向に「うお座」があるのです。 目に見えない点にもそういった大事な意味があるのでした。


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図1 11月上旬午後7時頃の東の空(Stellariumを用いて作図)
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図1 地球の公転軌道と春分点の関係
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両方のパワーポイント
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