毒蜘蛛パルサー


今日は講義をするために東京工業大学に来ています。 そこでこちらの谷津先生や河合先生からおもしろい毒蜘蛛パルサーの研究をしている事を お伺いしたので紹介します。 この研究には山形大学の私たちの研究室を卒業した若手の高田さん(香港大)も参加しています。

星は宇宙空間で孤独にその一生を終えると思われるかもしれませんが、 連星といって二つの星が互いに回り合って運命をともにするものもあります。 そのなかでも強烈な運命をたどるのが毒蜘蛛パルサーの場合です。

強烈な運命とは、連星の一方の星であるパルサー(パルスを出す星)がその強いエネルギーによって相棒の星を溶かしてしまう、 というものです。最終的には完全に相手の星は蒸発してなくなってしまうと考えられます。 交尾のあと雄を食べてしまう毒蜘蛛(黒ゴケ雲)になじんでブラックウィドウパルサーと 呼ばれるものです。図1のように一方の恒星(右側)を左にある小さなパルサーが 溶かしています。

最初、ガンマ線望遠鏡での探査で変なガンマ線放射源がまず見つかりました。 これが図1のパルサーなのですが、最初はそうとは分からず、いったいこれは何だろうと 疑問符がついた天体でした。 そこでガンマ線をつかって研究していた天文学者が、 可視光線の天文学者や電波の天文学者に声をかけます。 すると電波ではわからず、可視光線でしらべると4.63時間で周期的に明るさがかわる星が 見つかりました(図2)。 可視光線でみえる光の性質と変動からこれは星が溶けており、 ガンマ線を出している星(パルサー)の周りを 4.63時間の周期で 回っているらしい事が分かりました。 X線の天文学者が調べると同じ周期で変動している事も分かりました。 このX線は、温度が100万度で大きさ1.6kmの大きさのものから出ている事がわかりました。 これはまさに、パルサーの特徴ですので、溶かして星がパルサーだとはっきりしました。

こんなに激しい星と星の攻防は珍しい現象です。この毒蜘蛛パルサーはどこにいるのかなと 思って位置を確認したところ「うお座」にあるので秋の四辺形の南側、ちょうど今晩あたり よく見えているんだなと思ったらなんだか親近感がわきました。


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図1 相手の星を溶かす毒蜘蛛パルサー(提供、谷津陽一先生)
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図1 可視光線での明るさの変動
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両方のパワーポイント
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