PSR B0943+10 の話

ある電波星での会話(図1)。 「もう、5時間も電波飛ばしたから、ちょっと休憩しようか。」 「そうだね、発信器のメンテもしたいし。」 「それよりおなかへったよ。食事にしよう!」 「おいしいグラタンが手に入ったから、チンして食べよう。」 「電子レンジの電源がないけど、、」 「電波とめて、余った電力で電子レンジを使おう。」


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図1

これはパルサーと呼ばれる電波星での宇宙人の仮想の会話です。 パルサーからの強力な電波ビームは地球にもやってきます。 話題のパルサーは図2のように、しし座方向の3200光年彼方の星です。 この星は、1.1秒周期で自転しているので、電波ビームは回転し、 地球には1.1秒ごとにパルスとして電波が届きます。

このパルサーは、いつもは元気よく電波を出していますが、数時間くらいごとに、 このお話しのようにお食事時間なのでしょうか、 1時間ほど気まぐれにお休みします。 電波の発生メカニズムは分かっていないの で、なぜ気まぐれに電波がお休みするのかも当然分かっていません。


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図2 パルサー B0943+10の位置

オランダのハームセンさんの研究グループは電波望遠鏡とX線望遠鏡を同時にこのパルサーに向けて 大発見をしました。 電波のお休みしている時に、X線が出ていることを見つけたのです。 つまり、電波がお休みしているときに、その星ではなにかとても熱いものが出来ているようなのです。 電子レンジでグラタンを温めているわけではないですが、とにかく熱いものがあってそこから X線が出ていたのです。そして、しばらくしてふたたび電波放射が始まるとそのX線が止まる (熱いものがなくなる)のです。

パルサーからの電波放射のメカニズムはまだ分かっていません。しかし、この天然の電波が何らかの 理由で止まると、その反作用として、星の表面が非常に高温になることがはっきりしました。 これはパルサー電波の謎の解明に大きなヒントになります。 私もこれを説明するようなコンピュータシミュレーションをしようと思っているところです。

宇宙人が本当に電波を止めて温かいお食事をいただいているのではなく、 自然現象として電波の停止と熱放射がどうつながっているのでしょうね。

(参考論文: Science誌 2013年1月号 Hermsenほか)



references
総合ppt

図1 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/255-fig1.jpg 図2 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/255-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/255-fig.pptx