埼玉大学で学会

今回は桜が咲き乱れる埼玉大学のキャンパスから天文学会の風景をお届けしたいと思います。 学会の重要な行事である天体発見賞の表彰も今日ありました。 山形在住の超新星発見で有名な板垣公一さんもまたあらたに6個の天体を発見し 天体発見賞を受賞されました。


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図1 天文学会ポスターセッションの会場風景

学会では天文学者が最新の研究成果を発表し討論しますが、他分野の学会と大きく違う 点が二つあると思います。 まず研究者の殆どが背広も着ないで普段着姿で、カジュアルなファッションであること。 もうひとつは、ジュニアセッションと言って、小中高校生もプロの研究者に混じって 発表できることです。 図1はポスターセッションの会場ですが、第一線の研究ポスターに混じって、 小中高校生のポスターも貼られています。23日土曜日にはジュニアセッションで 口頭発表もありました。大学や研究所の先生が質問したり助言を与えたりします。 だれでも参加できますので研究発表してみたいときは山形大学の私のところまで ご相談ください。

ブラックホールに落ちてゆくガスの話もおもしろいトピックでした。 このコーナーのNo.235で、今年の夏頃、私たちの銀河系の中心にあるブラックホールに 向かって、地球の3-4倍くらいの質量のガスのかたまりが落ち込んでいくらしいことを紹介しました。 学会では、その様子の詳しいコンンピュータシミュレーションの結果が東京工業大の斎藤貴之特任准教授 から発表されました。


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図2 この夏、ブラックホールに落ち込むガスの軌道

結果のエッセンスは二つあります。図2の様にガスのかたまりが運動しますが、 ガスのブラックホールに近い側と遠い側でブラックホールからの引力が違います。 このためにガスは大きく引き延ばされます。これを潮汐(ちょうせき)効果といいます。 潮の満ち引きが生じるのと同じ効果です。図3はコンピュータシミュレーションの結果です。 この引き延ばし効果を横からみると図2のようになり、ガスは引っ張られたために、 上下から押しつぶされることになります。このためガスは圧縮され熱くなり、 太陽の50倍ほどの光を発すると予想されました。


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図3 ブラックホール近くのガスの潮汐破壊のコンピューターシミュレーション (提供:大斎藤貴之准教授(東京工業大学))

もう一つは、ブラックホールに吸い込まれるのはこの計算では10%ほどだそうです。 これだとX線では見えないでしょう。 しかし、この結果はガスの自転によって変わり得るので、実際にどれくらい吸い込まれるかは 観測してみないと分からないということでした。さて、結果の報告を待つことにしましょう。


references
総合ppt

図1 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/257-fig1.jpg 図2 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/257-fig2.jpg 図3 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/257-fig3.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/257-fig.pptx