この宇宙に星が生まれるのも生き物が生まれるのもごく普通の自然のことなのでしょう。 そう思いたくなるアルマ望遠鏡の結果があります。 アルマ望遠鏡は、 この連載のNo.248で紹介した南米にある望遠鏡です。
私たちが住む銀河系では現在、毎年10個くらいの割で星が誕生しています。 しかし、100億年も昔には、その何百倍もの高い率で星が誕生していたと 考えられています。 特に、爆発的星形成銀河(スターバースト銀河)ではものすごい早さでつぎつぎに 星が誕生し、そのため、銀河もものすごく明るく光っていました。 このようは銀河は遠くにあっても見つけやすいものです。
さらにもう一ついいことがあります。そのような遠くの銀河と地球との間に 別の銀河が入り込むことがあって、その場合、その入り込んだ銀河が重力レンズ になって、遠くの銀河の光を増幅します。なので、ますますよく見えます。
このようにして遠くの爆発的星形成銀河が発するひかりを アルマ望遠鏡でとらえました。図1で赤くみえるのがアルマ望遠鏡で とらえた爆発的星形成銀河の光です。 小さな点にしか見えないはずの銀河が重力レンズのために 途中がくびれたドーナッツのように見えています。 これは、宇宙誕生からたった10億年くらいしか経っていない初期に発せられた光であることがわかったので、 宇宙誕生から10億年くらい経ったころにはもう既に盛んに星が誕生していたことがわかります。
きっと宇宙で最初に星が誕生したのはもっと宇宙の誕生に近い時代なのでしょう。 けれど、はっきりしたことはまだわかっていません。
図2は宇宙誕生から現在まで138億年の歴史を示しています。 宇宙の歴史ではかなり初期の頃から星の形成が始まったことが図からわかります。 しかし、もっと驚くべきことはアルマのとらえた赤い像は、「水」から発せられたものだということです。 誕生直後の宇宙には炭素や酸素原子はありませんが、まもなく、星が作られ、星の中で炭素や酸素原子が作られ、 そして、水もできたということがわかったのです。
こう考えると宇宙で最初の生命もまたかなり早く誕生していたのかもしれません。 私たちの宇宙は、星や生命を育む運命をもって生まれてきたようですね。