11月から12月にかけて大彗星が出現するという予報が出ています。 アイソン彗星です。 明るさの予測が確かになったらご案内しようと思いますが、 今日は彗星の役割について考えたいと思います。
彗星はほうき星ともよばれ図1のように明るい核がありそこからガス状のものが尾を引いてみえます。 ひと月くらいの間、夕方か朝方、晴れていれば毎日見えますが、その位置は少しずつ星座の中を動いて いきます。 古代ギリシアのアリストテレスは、彗星は虹やオーロラ同様、大気の中の現象と考えました。 中世の人はこのアリストテレスの考えを信じていました。 また、地球が球体であることは知っていましたが、 地球は不動で宇宙の中心にあり、月や太陽、5つの惑星、星座を作る星々はおよそ一日に一回地球の 周りを回っていると考えていました。 いわゆる、天動説(地球中心説)です(図2)。
天動説では、 水晶のような透明な球殻(きゅうかく)が多重の層になっています。 そして、各層に月や太陽や惑星、星々があって、 各層が少しづつ違った回転をしているために、月や太陽、惑星などの天体の動きが異なるのだと説明されていました。
本当は、地球を含めた惑星が太陽の回りを公転していて、月は地球の周りを回る衛星であることは みなさんのご存知の通りです。地動説(太陽中心説)です。
ティコ・ブラーエは天動説から地動説への移行期の天文学者です。 ティコは、彗星に視差がないことを確認して、彗星はアリストテレスの言うような大気内での 現象ではなく、月よりもずっと遠い天の世界のものであることを知りました。 そして彗星の軌道は、惑星が運動する層をつぎつぎに平気で突き破っている ように見えました。 水晶のような回転する層があるとは思えないのです。 これは、天動説を打ち破るために非常に重要な発見です。
彗星が型破りな天体であったことが重要です。 惑星の軌道が数学的に単純な楕円であったり、周期と軌道半径の間に 規則正しい規則があったりと、 科学の発展は美しい整然とした関係の発見が支えているように見えます。 しかし一方で、彗星のように型破りな現象もとても科学にとっては有用であることがわかります。 規則正しい美しさととんでもない変なこととのバランスのなかに科学研究があるのを感じます。
参考:
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/285-fig1.jpg 図1 ヘーフボップ彗星(提供;Philipp Salzgeber) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Comet-Hale-Bopp-29-03-1997_hires_adj.jpg ウィッキベディアからですが、許諾については難しいかもしれません。) 新聞報道で使った、風景の入った彗星のイメージがあればそれと交換可能です。 それもない時は予備の図3でこちらは(提供:国立天文台)でOKです。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/285-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/285-fig2.pptx 図2 天動説に彗星加えた場合 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/285-fig3.jpg 図3 予備:ヘールボップ彗星(提供:国立天文台)