芋虫が蛾や蝶になるのは、昆虫では普通だというものの、 やはり不思議なことです。 天体にも同じような変態がおこるとすると、 どんな天体か気になります。 天体の変化は人間の歴史に較べればずっとゆっくりしていて、 早くても百万年というスケールが普通ですので、 そんな変化を人類が見れたとしたらそれはラッキーというほかありません。
私が学生のころはX線パルサーと電波パルサーは名前はにていますが、 全く違う種類の天体だと教わりました。 電波パルサーは先に発見されたのですが、電波がなぜ出るか、その仕組みははっきりしていません。 とにかく、電波のビームが灯台のように回転し、電波が点滅して見えます。 その星の自転がエネルギー源だということがわかっていて、 回転駆動パルサーも呼ばれます。
一方で、後からからみつかったX線パルサーは、その名前のとおりX線で観測されます。 その発生原因はあっさりと解明されていて、 その星のまわりに回っている別の星からガスが落ちてきて(専門用語で降着といいます)、 落ちてきたガスが数億度の高温になりX線で光ります。 降着駆動パルサーとも呼ばれます。
電波パルサーとX線パルサーは、 電波とX線の違いだけでなく、 エネルギー源が全く違うので別種の天体だと区別されていました。
ところが、先月驚くべき観測が発表されました。 電波パルサーとX線パルサーを相互に行ったり来たりする星があるというのです。 場所はいて座です。2003年にはX線で暗かったのですが、2013年にはすごく明るく 確かにX線パルサーであることがわかりました。 たくさんのガスが降着して明るく光っています(図1参照)。
2003年4月29日には暗いながらもX線パルサーだったことがわかっているのですが、 調べてみると2003年4月5日には同じ星は電波パルサーだったことが判明しました。
仕組みはこうです(図2参照)。この星は中央のバレリーナのようにスピンしていて 電波パルサーなのですが、時々、そのまわりを回るちょうど太陽と同じような星から 渦巻いたガス降ってきてその勢いが増します。 降着のためX線を出し始め、バレーは中断、電波は止まります。 ところが、落ちてくるガスの渦運動のためバレリーナの回転の勢いが増します。 そうするとガスは吹き飛ばされ、バレーが再開、電波パルサーにもどります。 こういたことを繰り返しているようなのです。 二種類の天体が違うと思っていた私たちには驚きでした。 しかもこのバレリーナの回転ですが、一秒間に250回だそうです。 すごいですね。
図1 X線パルサーの時間変動(提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/286-fig1.jpg 図2 X線パルサーと電波パルサーの両方になる仕組み http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/286-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/286-fig.pptx
参考: