ブラックホールって実際にあるんですか、と聞かれることがしばしばあります。 もちろん答えは「はい」です。 それどころか、もうひと頑張りでその黒い穴(ブラックなホール)が見えるところまで 望遠鏡の性能が向上してきています。
図1はM87という銀河の中心にあるブラックホールの映像です。 左下のもっとも明るい部分にブラックホールがあります。 注目してほしいのは左上の小さい白い丸で、 この丸のサイズが予想されているブラックホールの大きさです。 ブラックホールの位置は明るい火の玉状でしかありませんが、 あと数十倍精密な映像が撮れれば、 この光の中にブラックホールの姿が見えるはずです。
このブラックホールの重さは太陽の60億倍くらいで、 その大きさは太陽をめぐる土星の公転軌道の十倍くらいです。
このように精度の良い画像をとるために超長基線電波干渉法(VLBI)という技術が使われています。 数千キロメートも互いに離れた電波望遠鏡で同時に電波を受けて、電波の到来時間の差を 利用して画像を合成する技術です。 人間の視力は、1.5だとすごくいいね、とか言いますが、この単位で測るとVLBIの視力は百万 くらいになります。
図1で左から右に煙がたなびくように光がのびているのがわかると思います。 これはブラックホールから噴出したガスですが、このガスはどんどん伸びで 数千光年も続いています。図2がその長くのびるガスの写真です。左下の 光る点がブラックホールの場所です。
ブラックホールはその重力(引力)で何でも吸い込む性質がありますが、 引き寄せられた物質は押し合いへし合いして吸い込まれて、一部は吸い込まれず、 逆に吹き出してしまいます。 なんでこんなに細長くなるか理由はわかっていません。 なんでかなと考えつつ、図1の火の玉の中に、 吸い込まれるガスと吹き出してくるガスが詳しく観測される 日を待つことにしましょう。
図1 M87銀河のブラックホール部分の43ギガヘルツの電波映像 (提供:国立天文台水沢VLBI観測所) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/292-fig1.jpg 図2 ハッブル望遠鏡で見たM87銀河(提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/292-fig2.jpg
参考:
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2013/0821post_507.html