11月29日4時9分(日本時間)に太陽に最接近したアイソン彗星が話題になっています。 太陽中心から約190万キロメートルの距離まで太陽に近づきますので、 図1のように太陽の直径ぶんくらいしか離れていないところに達するわけです。
冬のひなたぼっこでも太陽の光を受けると結構熱くなることを思い起こすと、 太陽にそんなに近づいたらどうなるんだろうと素朴に思い、 少し計算してみましたのでご報告します。
地球上で受ける太陽のエネルギーが1平方メートルあたり1.4キロワットであることや 彗星と太陽の距離、 そして、 彗星の大きさは約2キロメートルくらいであることを私たちは知っているので、 もっとも太陽に近づいたとき彗星が受けるエネルギー量は計算できます。 彗星の受ける太陽熱は約100兆ワットという結果になりました。 予想通りすごいワット数です。
計算を進めると、 彗星はどんどん温度が上がり、だいたい2500度になることがわかりました。 この時の明るさは大体3等星くらいです。
しかし、彗星は岩石ではなく氷を主成分としているので、こんなに高温になると、 氷が解け、気化し、さらにイオン化して長い「彗星の尾」を形成します。 彗星の体積を計算すると約300億立方メートルです。 氷ならば約300億トンです。 太陽から受ける約100兆ワットのエネルギーを太陽通過の約1万秒の間受け たとすれは、彗星の約一割が蒸発して消えてしまうことがわかりました。 現在の状況はSOHO宇宙望遠鏡の画像からよくわかります(図2)。
太陽の表面で起こる爆発現象の爆風がアイソン彗星を襲う可能性もあります。 そうするとここで計算したエネルギーより何倍も大きなエネルギーが彗星に注がれるかもしれません。 盛んな蒸発のあと、どんなにか大きな尾をみせてくれるか今週のアイソン彗星に注目しましょう。
修正校 日本時間の11月29日未明に太陽に最接近したアイソン彗星(すいせい)の ことが話題になっています。太陽の表面から117万㌔の距離まで近づいたの で、図のように太陽の直径よりも短いところまで達したわけです。 冬のひなたぼっこでも太陽の光を受けると結構熱くなるので、太陽にそんなに 近づいたら彗星はどうなるのだろう。疑問に思って計算してみましたのでご報 告します。 地球上で受ける太陽のエネルギーは1平方㍍当たり1・4㌗です。ですから彗 星と太陽の距離、そして彗星の大きさが分かっていると、太陽に最も近づいた 時にその彗星が受けるエネルギー量が計算できます。アイソン彗星の場合、受 けた熱量は約100兆㍗という結果になります。すごいエネルギー量です。 計算を進めると、アイソン彗星はどんどん温度が上がり、2500度ほどにな ったと考えられます。この時の明るさはおおよそ3等星くらいです。この彗星 は岩石ではなく氷を主成分としているので、こんなに高温になると氷が溶け、 気化し、さらにイオン化して長い「彗星の尾」を形成します。 アイソン彗星の体積を計算すると約300億立方㍍になります。氷ならば 約300億㌧です。太陽から受ける熱量が約100兆㍗で、そしてこの熱量を 太陽通過の約1万秒間受けたとすれば、彗星の約1割が蒸発して消えてしまう 計算になります。 以上の計算が終わった数時間後、米航空宇宙局(NASA)からアイソン彗星 が太陽に再最接近した際、ばらばらに崩壊して蒸発したとみられるとの発表が 飛び込んできました。しました。写真は、太陽観測宇宙望遠鏡SOHOで撮影 された、再最接近直後の彗星の画像です。 なるほど、彗星のサイズが蒸気によりもし3倍くらいに膨らめば、受けるエネ ルギーは9倍になり、すべて蒸発するのも自然なことだなと思いました。また、 二つに割れると蒸発が二倍容易になるという性質があるので、一度壊れると雪 崩的に蒸発が進むでしょう。アイソン彗星のサイズと軌道はまさに、生きのこ るか蒸発するかのぎりぎりの状態だったのだなと感じさせられます。
references
SOHO現在の太陽
図1 彗星の受ける太陽の影響 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/293-fig1.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/293-fig1.pptx 図2 宇宙望遠鏡SOHOに載せられたコロナグラフの映像(中央の太陽の光は隠し、回りを見やすくしている)。 右下に彗星、左下に太陽表面爆発の爆風が見える。 (提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/293-fig2.jpg参考: