簡単なようで簡単でないこと(星の誕生)

非常に単純そうなのに、 いろいろ事情があって実際は単純でないということが世の中にはたくさんあります。 その典型は星の誕生でしょう。

万物には互いに引き合う「万有引力(ばんゆういんりょく)」 があることが知られています。 重力ともいいます。 宇宙空間にだだようガスは万有引力の為に互いに引き合い集まろうとします。 それが大きな塊に成長すると原始星です。 引力による収縮が進み、中心の密度も温度も高くなり、 そこで核融合反応が起こると、 膨大なエネルギーを発生し、光りはじめて星となります。


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図1 エネルギー損失があると落ち着いた位置にで止まる。

こう聞くと、ごもっともという感じですが、 図1をご覧ください。 ボールAが重力により落下すると、 落ちたあとの状態はボールBでありこれが安定な位置です。これはごもっともな話です。 しかし、実際はバウンドするCという状態を経て最後にBの位置に落ち着くわけです。 重要なポイントは、エネルギーを摩擦などでロスしなければ落ち着かないということです。

星の場合も同じで、エネルギーをロスしなければ星になりせん。 しかも、星の場合、ロスしなければならないのはエネルギーだけではありません。 集まってきたガスは多かれ少なかれ回転していますので、 回転を失わなければなりません。 宇宙のガスは磁石になっているので、この磁石の性質を失わなければ星になれません。 このようにいろいろなものを吐き出してそして最後に星という落ち着いた状態になるのです。


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図2 オリオン座の大星雲の写真。HHと数字で表したのがハービックはロー天体。 (提供:NASA)

図2のオリオン座の大星雲の写真にはたくさんの筋雲のようなもやっとした構造がみえています。 これをハービックハロー天体とよびます。 これは星ができるときに、余分なものを吐き出している結果だと考えられます。 図3のように星の中心から二方向のジェット流としてみえることがよくあります。 このようなジェットが吹き出るという現象の後に星ができるということが分かっています。 しかし、余分なものをどのような機構で捨てて星に至るか、 そのメカニズムはは実は良くわかっておらず、 天文学の大問題の一つです。


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図3 原始星の中心から二方向にでるジェット流 (提供:NASA)
references
図1 エネルギー損失があると落ち着いた位置にで止まる。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/297-fig1.jpg
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/297-fig.pptx

図2 オリオン座の大星雲の写真。HHと数字で表したのがハービックはロー天体。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/297-fig2.jpg


図3 原始星の中心から二方向にでるジェット流(HH47)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/297-fig3.jpg



参考: