「おりひめ星まで25光年とか本に書いてあるけど、星までの距離はどうやって求めるのですか」 という質問をよく受けます。 近い星の距離は三角測量できるのですが、数千光年より遠い星は遠すぎてこの方法では測れません。 そんな場合、どうすればいいでしょう。
だれかが遠くに立っていて、そこまでの距離を知りたいとします。 そこで図1のように五円玉の穴をのぞいて、五円玉の距離を調節して 人の姿が穴のなかにすっぽり入るようします。 そのとき、ちょうど目から50cmの距離であったとします。 さて、遠くにいる人までの距離が分かるでしょうか。
姿をみて、それが知っている人なら、身長が分かるので距離が分かってしまいます。 知らない人でも、それが確かに人であってニホンザルではないとか、男性か女性かの区別がつく可能性があります。 また、星には巨人星(巨星)とか普通星(主系列星)とかの区別があるのですが、同様に、 ぱっと見て身長が2mもありそうだなとかも身長を推定する重要な情報です。 こうしていろいろ姿を見ながら、身長は160cmから180cmの間だなと言うところまで予想できればしめたものです。 五円玉の穴の直径は5mmですから、距離は直径の100倍あります。 人の身長と距離も同じ比ですから、身長が1.6から1.8mなら距離は160-180mと決定できます。 こうして三角測量しないで距離が推定できました。
星は光の虹色に分けて写真をとると図2のようにスペクトル写真が撮れます。 図2Aは色見本、BとCは実際の星のスペクトルです(白黒写真なので色は色見本から想像してください)。 この例では、B星もC星も表面温度が約1万度であると推定できます。 さらに微妙なスペクトルの違いから B星は巨人星、C星は普通星と区別できます。 このように、温度と星の種類が分かると、 星の明るさ(ワット数)が分かります。 これは、三角測量で距離が分かっている星の研究による成果です。 このワット数と、夜空で輝いている星の実際の明るさとの比較で星までの距離が計算できます。 例えば、太陽と同じ6000度の普通星が見かけ上、20等星として写真に写っていたら、 3万光年くらい遠いのかななどと推定することができます。 非常に面倒ですがこうして三角測量しないで星までの距離を推定することができるのです。
図1 三角測量を用いない距離の測り方 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/303-fig1.jpg 図2 星のスペクトル(提供:国立天文台、大阪教育大学) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/303-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/303-fig.pptx
参考: