図1の画像は、かんむり座の極く小さな部分です。 かんむり座はちょうど今も見えていて、夕方暗くなったら、 西の空高い位置にみえます(見つけ方はこのシリーズNo.322)。 画像の横幅は、視力2の人がやっと空に見つけることができるくらい小さいものです。 ということはとても高い倍率で撮影した画像であるとわかります。
銀河がいろいろな色の小さい点々(小さい楕円形)としてみえていて、 銀河をつないで星座ができそうですね。 でも、銀河はとてもたくさんの星の集団ですので星座という言葉はあたりません。
もっと、よくみると、 画像のなかには蜘蛛の糸のように青い筋がたくさんあります。 特に、中央の大きな銀河(オレンジ色)のまわりを青い糸がぐるりと取り囲んでいて、目玉のようです。 しかも、目の中に涙でもためているのでしょうか、青いくねくねしたものが見えます。 天文学者もこのくねくねが気になって、さらに拡大した画像で調べてみました。
図2が拡大した画像です。非常に接近した銀河が二つあることがわかります。 その下の縁に、青い真珠がたくさん糸でつながれているようにくねくねと並んでいます。 詳しく調べた結果によると一つ一つはできたばかりの星で、星と星、つまり、 真珠と真珠の間の距離は3千光年ほどです。それが10万光年にも渡って続いています。 おそらく一斉にこれらの星が誕生したものでしょう。 このように見えている期間は約1000万年程で、宇宙ではほんの 一瞬のできごとです。だから、こんな画像を人類が撮れたのはとてもラッキーなことだと思います。
今見えている二つの銀河は衝突しているようです。 すると、潮汐力という力が働き、銀河のガスが長く伸びて引きづり出されます。 水道の蛇口から細く出てくる水はやがてつぶつぶに分裂して水玉になります。 銀河から細く伸びたガスも実はつぶつぶに分裂して、 一つの粒から新しい星が出来たようです。
粒ができるのは、万有引力で互いに引き合う力によって一つのまとまったかたまりができるためです。 この現象を天文学者はジーンズ不安定性と呼んでいます。 これはズボンに使われるジーンズの名称とは全く関係がありません。 提唱者であるイギリスの物理学者ジェームズ・ジーンズにちなむものです。
図1 銀河団 SDSS J1531+3414 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/329-fig1.jpg 図2 真珠のようなつぶつぶは新しくできた星々です。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/329-fig2.jpg
参考: