10月8日(今日)の月食はうまく見えるでしょうか。 このシリーズの333回(9月24日)では、月食の起こる位置を調べると、 月食を起こす原因となる魔物があたかも天を移動して見えるみえることをお話ししました。 魔物の正体はなんでしょう。
昔、ラーフという頭の良い魔物がおりました。 あるとき、ラーフは、最高神ヴィシュヌが密かに隠し持っている不死の薬をみつけて、 呑んでしまいます(図1)。 それを見ていた太陽と月はヴィシュヌ神に、 ラーフが不死の薬を盗んだことを告げ口します。 怒ったヴィシュヌ神はラーフをまっぷたつに切り裂き、天に放り投げました。 それ以来、ラーフの頭と体はそれぞれ正反対の位置で天を巡るようになりました。 (バングラディシュのヒンドゥー神話(「アジアの星物語」(万葉舎)より)
ラーフの頭と体はちょうど他の惑星と同じように天を巡るのですが、 その軌道上で、太陽や月とで出くわすと、 告げ口をされた仕返しに、太陽や月をぱくりと飲み込んでしまいます。 このとき日食や月食が起こるのです。
天文学的な説明はこうです。 地球から見て太陽が運動する道筋を黄道とよびます。 同じように月の通る道があり白道といいます。 図2の様に、 黄道と白道の交わる位置が二カ所あります。 そこがまさに、魔物1と魔物2が月と太陽を待ち構えている場所です。 そして、この二つの魔物は、ラーフの頭と体であることはお察しの通りです。 黄道と白道が交わる位置こそ、日食や月食の起こる位置ですから、 昔のインドの人が考えたこの話は、 天文学的にも正しい考えなのでした。
図1 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/335-fig1.jpg 図2 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/335-fig2.jpg
参考: