今晩、7時頃、南の空、つる座というあまりなじみのない星座が見えています(図1)。 つる座のなかでも、山形からみると地平線の上にちょっとだけ、ちらっとしか顔を 出さない、図の赤い丸で囲った部分に「グリーゼ832」という星があります。 カノープス同様に、出たらすぐに沈んで見えなくなる「おうちゃく星」です。
太陽以外の星にも惑星があることがはっきりし、発見された惑星の数は いままでに4875個もあります。 以前紹介しましたように、これらの惑星にも名前をつけようという動きがありますので、 金星、木星、土星といった太陽系の惑星だけでなく、太陽以外の星々の惑星に、 私たちもだんだんと慣れ親しんでいきましょうか。
それで今日はつる座のおうちゃく星グリーゼ832に注目しましょう。 この星は太陽に少し似ていますが、太陽よりはすこし小さくて、 太陽の45パーセント程の重さしかありません。 太陽の表面温度は約6000度ですが、この星は3500度くらいです。 この星には木星の約6倍程の重さの惑星グリーゼ832bと地球の約5倍程の重さの惑星グリーゼ832cが見つかっています(図2)。 中心となる恒星グリーゼ832から惑星グリーゼ832bまでの距離は3.4天文単位、もうひとつの惑星グリーゼ832cまでは0.16天文単位です。
天文単位とは、太陽と地球の間の距離の何倍かを示す単位です。 グリーゼ832cは中心の星に非常に近いので灼熱地獄になるのかなと思いましたが、 中心の星が太陽よりも小さくて低温なので、 実はこの距離でちょうど液体の水が存在するくらい良い温度なのだそうです。 すると生き物がいるかもしれませんね。 グリーゼ832まではたった16光年しか離れていないので、 高等な文明があれば通信できるかもしれません。
この原稿を書いてつくづく思いました。グリーゼ832cとか面倒な書き方でなく、 名前をつけて、横着星の惑星の与太郎みたいに短く書きたかった。
図1 つる座とグリーゼ832の位置。 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/338-fig1.jpg 図2 グリーゼ832の惑星と太陽系の比較(縮尺は見やすくするために正確にしていません) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/338-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/338-fig.pptx
参考:
http://exoplanets.org/ データベース GJ 832 D=4.954pc=16ly RA=21:33:34 DEC=-49:00:25 つる M=0.45Msun Teff=3472K for b 6.4Rj T=3416day r=3.4 au for c T=35.67 day r=0.162au reference http://arxiv.org/abs/1406.5587 preview /Users/shibata/Desktop/ss/ref/bibitems/1406.5587v1.pdf