今から三千年以上も前、古代メソポタミアでも正月に新年祭が行われていたようです。 当時の正月は春分の日に近い新月の日でした。
新年祭がどんなであったかということは、 行事のマニュアルが、くさび形文字で書かれた粘土板として発掘され解読されているのでわかります。 古バビロニア王国につたわる「バビロンの新年祭」と呼ばれる粘土板です。 新年祭は1日から十二日までつづく盛大な行事で、 大祭司がとりおこない、バビロンの町の主神マルドクを讃え、国の安泰と国民の安寧を願う儀式です。
その中になんと22個の星や星座の名前が出てきます。 こんな盛大にしておごそかな儀式に星や星座が出てくるなんて素敵な国ですね。
第四日目の夜明け前3時間20分前に大祭司は起き、沐浴することになっていて、 そのあと、こんな場面があります。 「大司祭は神殿の大庭に出て、かれの顔を北に向け、 『イクー星、エ・サギラ神殿、天と地の似姿よ』 と三回唱え、 エ・サギラ神殿に祝福をおくる。」 イクー星というのは現在でいうとペガスス座の秋の四辺形のことで、 この形をまねてエ・サギラ神殿が作られているそうです。
試しにコンピュータシミュレーションで紀元前1600年頃で 夜明け前のこの時刻、 バビロンの町で見える夜空を再現すると図1の様になりました。 まさに、この時刻に東の空に秋の四辺形が昇って来ているではありませんか。 参列者はこれを見て天にある神殿(ペガスス座)と地上の神殿を重ねて、神の存在を強く意識したのでしょう。
「海の縁をふみつけるもの、サソリの胸の星こそわたしの主です。」 という台詞もあって、これは現在のさそり座のことです。 古代の人々の星座が現代にも使われているわけで、古代と現代が繋がっている感じがします。 解読された粘土板にはことわざ集もあり、こんなことが書いてあります。 (ビール好きの人) 「楽しみ---それはビール、いやなこと---それは出張」 (嫉妬深い妻を持った男) 「私の妻は私を嘘つきという。しかし、私はよその女の尻をおいかけたりしているだろうか。」 三千年の時間差はありませんね。
図1 古バビロニア王国時代、正月、夜明け前の東の夜空 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/347-fig1.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/347-fig.pptx
参考: