「星がお隠れになる日」と「お出ましになる日」というのがあって、 古代の人はこれをとても大事にしました。
例えば、図1は今日の日没直後の西の空の様子です。 秋の四辺形と呼ばれるペガスス座が見えていることに注目してください。 この時、南の空を見れば、冬の星座の代表のオリオン座が見えます。 そして、東の空をみると春の星座として知られるしし座が昇って来ています。
時間が経って、夜半にはさそり座が昇ってきます。 そして夜明け前、4時頃になれば、 東の空には夏の大三角(おりひめ星、ひこ星、はくちょうざのデネブ) も見えます。 このように、夜通し星をみていれば、 一夜にして秋の星座から夏の星座までほとんど全部の星座を見ることができます。
図1の夕方の西の空に話をもどします。 夕方見えている秋の四辺形は3月11日頃まではなんとか見えていますが、 それ以降は見えなくなっています。 夜通し、夜明けまで探しても秋の四辺形は見ることができません。 秋の四辺形の星々はお隠れになったということになります。
しばらく見えない状況が続き、 やっと4月にはると、明け方東の空に、 秋の四辺形が現れるようになります(図2)。 秋の四辺形がお出ましになったのです。
このようにしばらく見えなくなっていた星が、 明け方の空に初めてお出ましになるという現象を 昔の人はとても大切にしていました。 一番有名なものは、 シリウスという全天で一番明るい星がお出ましになる日を古代エジプトで記録していたことです。 最古の記録は、紀元前1871年ころ、この日にお祝いの行事が行われたというもので、 パピルスに書かれていました。 シリウスがお出ましになる日がナイル川の増水の合図であり、 水が来ることで作物の豊穣が約束される意味をもっているのです。 それにしても昔の人は星をよく見ていました。 そして、一年という周期を感じ取ってました。
図1 2月18日18時ころの西の空 (ステラリウムをもちいて作成) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/353-fig1.jpg 図2 4月1日4時半ころの東の空 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/353-fig2.jpg パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/353-fig.pptx
参考: