新しい日本のX線望遠鏡

2015年度に新しい日本の宇宙望遠鏡がHII-Aロケットによって打ち上げられる予定です。 アストロHという名前で呼ばれています。 いよいよ打ち上げ直前ということで3月18日から21日まで大阪大学で開催された 日本天文学会では特別セッションが開催されました。


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図1 まもなく打ち上げ予定のアストロH(X線宇宙望遠鏡)(提供;JAXA)

長さ14メートル、重さ2.6トンということで日本としては今までに無い大きな 望遠鏡が人口衛星として地球を回る軌道に打ち上げられます。(図1) 宇宙からやってくるX線をとらえる望遠鏡です。 口径が45センチメートルの望遠鏡が4台束になっています。

アストロHの持つ二つのすばらしい特徴を紹介しましょう。 一つは、とらえたX線を虹のように波長ごとに分ける力がこれまでのどの 望遠鏡よりも優れていることです。 たとえば12キロ電子ボルトのX線をとらえた時、 測定されるエネルギの精度は5電子ボルトです。 (電子ボルトはX線のエネルギーを測る単位です。) 例えるなら,身長120センチメートルの人の身長が0.5ミリメートルの 精度で測定できるということになります。 これによって図2のような超新星残骸とよばれる星の爆発跡を観測すれば, 爆発した星の元素の成分や爆発の速度などが精密に求められます。 このような爆発によって宇宙に広がった元素から私たちの体ができていることを 考えると, 私たちの体を作る元素の出来方について詳しく知ることが出来ると言っていいでしょう。 また、このような超新星爆発という現象のメカニズムも解明が進むと思われます。


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図2 NASAのチャンドラX線望遠鏡による超新星残骸の像(提供;NASA)

もうひとつの特徴は同時に測ることの出来るX線のエネルギーの幅です。 たとえば人間の目の場合、赤い色から紫色まで色の違いとして、 エネルギーの小さい光から大きい光まで、 あるエネルギー範囲の光を見ることができます。 しかし、その範囲を外れて, エネルギーが低すぎると赤外線となって目では感じません。 エネルギーが高すぎても紫外線となって目には感じません。 このように光を感じるセンサーには範囲というのがあります。 アストロHの場合、これが人間の目に比べて、1000倍くらい広い範囲の X線をとらえることが出来ます。 これによってこれまで分からなかった複雑な現象を立体的にとらえることが できるでしょう。

ロケットの打ち上げがうまくいくことを祈りながら、 望遠鏡が活躍を始めたらその成果を皆さんにお伝えすることを約束して この稿を閉じることに致しましょう。


references
図1 まもなく打ち上げ予定のアストロH(X線宇宙望遠鏡)(提供;JAXA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/368-fig1.jpg
図2 NASAのチャンドラX線望遠鏡による超新星残骸の像(提供;NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/368-fig2.jpg



参考: