母、宇宙を語る

もう10年以上も星空案内人の講座を開いていますが、 その受講動機をお伺いすると、自分の子どもや孫が生まれて来たら、 星空のことを語ってあげたいということをおっしゃる方がたくさんいます。 では、どんなことを語ってあげられるといいのでしょう。 星の神話などもいいと思うのですが、 宇宙の広さについて語れたらいいなと思います。


画像をクリック(拡大)

図1 地球から月まで歩いて約8年かかります。

「お月様はとても遠いところにあるんだよ。 歩いていくと8年もかかるんだって。 あそこに見える土星まで歩いて行くとすると4万年もかかるんだよ。」 (図1参照) このような話はいかがでしょうか。

4万年はぴんときませんが、自分が30年程あるいて子どもにバトンタッチし、 子どもが30年歩いて、孫、つまり、3世代目にバトンタッチし、と歩き続けると、 およそ1400世代もかかってしまいます。

太陽系の外に出て、今晩頭上に輝いているアークトゥルスまで歩くと、 宇宙誕生のころから歩き始めなければならないでしょう。 100億年以上です。 なんと宇宙は広いのでしょう。

そんなに遠くてもアークトゥルスからの光はちゃんと自分の目の中に入って網膜に届いています。 実際、 アークトゥルスから出たひかりの100億分の一が太陽系に届きます。 太陽系に届いたその光のうちの1000億分の一くらいの光が地球に降り注ぎます。 地球に降り注いだアークトゥルスからの光の、100億分の一のそのまた10億分の一程度がやっと網膜に入ってきます。 なんという運命の出会いでしょうか。こんな広い宇宙の中で、 星からの光と私の網膜のであいはなんと希な出会いなのでしょう。


画像をクリック(拡大)

図2 さらに遠く20万光年彼方の星々(NGC 602) (提供:NASA)

references
図1 地球から月まで歩いて約8年かかります。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/368-fig1.jpg
図2 さらに遠く20万光年彼方の星々(NGC 602) (提供:NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/368-fig2.jpg
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/245-fig.pptx



参考: