ダスト冷却
美味しそうなカステラ(図1)ですね。
我が家ではしばしばカステラを焼きます。
秘密の作り方があって実に簡単でしかも美味しいものができます。
しかし、ある時、どうもうまく焼けなくなったことがありました。
度をかさせるごとに状況は悪化し、とうとう焼けないでドロドロ状態になってしまいました。
使っている電気オーブンは結婚する前に妻が所有していたもので、
さすがもう老化かなと思いました。
そこで、このオーブンとももうお別れかもしれないと思いながら
きれいに掃除しました。
ところがそのあと、不思議なことに、
修理もしないのにうまく焼けるようになったのです。
これは宇宙で起きていることと同じことだな、ここで気がつきました。
鍵は前扉のガラスです。これが今はぴかぴか透明なのですが、
掃除する前は長年の使用で煤けて黒くなっていたのでした。
この煤、宇宙ではダストと言いますが、これがあると冷却剤になるのです。
オーブンの庫内はヒーターから熱放射がでて高温になります。
前扉に付着したダストは熱放射をほぼ100%吸収し、温度があがります。
そして、扉の全面、つまり、外に向かってダストは赤外線を放射します。
こうして、庫内の熱は非常に効率よく外に放射され、庫内が冷やされるという仕組みです。
図2のハッブル宇宙望遠鏡の映像では、多量にダストを含んだガスの雲が黒く見えています。
すぐそば(中央左寄り)に誕生したばかりの星が輝き、
回りのガスを照らしています。そのため、画面全体はぼーっと明るくなっています。
黒い雲の中には出来たばかりの星が熱くなっていると思われますが見えません。
しかし、ダストは光を吸収し、もらったエネルギーを目に見えない赤外線として放射しているはず。
星ができる時、集まって来たガスの密度が1立方センチメートルあたり数個まで増えると、
ダストがあればガスは摂氏マイナス200度くらいまで冷えます。
ダストが無いと、摂氏0度くらいにしか冷えません。
宇宙初期にはダストになる炭素などの原子が存在しないため雲は冷えないので、
その結果、できる星の質量は大きくて、太陽の数十あるいは百倍に達すると考えられています。
ダストは単なる煤のようなものですが星の運命をかえるほどの力を持っているのです。
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図1 オーブンの前扉のガラス面に注意
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/385-fig1.jpg
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図2 暗黒星雲の映像(提供:NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/385-fig2.jpg
本文終わり
references
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/385-fig.pptx