宇宙の時間1
アインシュタインの相対性理論によれば、
時間と空間は互いに交換し得る関係なのですが、
私たちから見れば、時間と空間とはまったく別な存在です。
空間は前後左右と思ったように移動可能です。
一方、時間は一方向に流れていて、それは私たちの力ではどうしようもないものです。
戻りたくても戻れませんし,
ささっと過ぎ去って欲しくても、決まった速度でしか進みません。
一様に流れる時間ですが,出来事の進行は決して一様ではありません。
変化しない毎日を暮らしをしているようで、努力はしているつもりですが,
受験にせよ,就職にせよ、結婚にせよ、夢を描いて地道な努力をする時間は何年も続きます。
しかし、その結果が出るのはほんの数分の短い時間です。
数分と数年の間には何と52万倍以上の開きがあります。
宇宙の時間はゆったりと流れていて全体は138億年もありますが、
宇宙とても、いつもゆっくりと変化しているわけではありません。
やはり決定的瞬間はとても短いものです。
その例はたくさんありますが、今日は太陽より10倍くらい重い星の一生をとりあげてみましょう。
重い星は短命ですが、それでも、
1千万年以上、太陽と同じように普通の星として光っています。
このとき星の内部では何が起きているかというと,
中心部の水素原子からヘリウム原子が合成される反応(核融合反応)が起きています。
約1千万年くらいで中心の水素はすべてヘリウムになってしまいますが、
ヘリウムの中心核では、
ヘリウムから酸素や炭素を作る反応が起きて、
おかげで、さらに、数万年間は星として光ります。
余談ですが,ここで出来た酸素や炭素が私たちの体の材料となりました。
中心ではどんどん反応が進み、図1のような多層構造の星になります。
そして中心に鉄ができると、鉄をどう組み合わせてもエネルギー源にならないので、
鉄の中心核は収縮し、最後には、一千万年かけてせっかくできた鉄が分解反応します。
この分解に要する時間はたった0.1秒。これが原因で、星は最後の大爆発を起こします。
図2は1987年に起こったそのような爆発の前後の写真です。
右の写真では鉄が分解した後の爆発による光で、明るく輝いています。
ゆったりとした時間の流れの中にも、多数の劇的な瞬間が織り込まれ、
宇宙全体の歴史が流れていることになります。
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図1 星のタマネギ構造
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/403-fig1.jpg
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図2 超新星1987Aの爆発の前後の写真(提供:アングロ・オーストラリア天文台)
(改変が禁止の条件で使える画像ですので,下辺のクレジットは残してください。)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/403-fig2.jpg
本文終わり
references
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/403-fig.pptx