重力波の起源の探求の道
ノーベル賞間違い無しといわれる大ニュースが先月12日に発表されました。
アメリカにあるLIGOという検出器が、
重力波の観測に初めて成功したというのです。
重力波はアインシュタインの一般相対性理論で予測された波で、
私たちが存在する空間が揺らぐ現象ですが、
いままで誰もその実在を示すことができないものでした。
重さのあるものが動き回れば必ず生じるはずのものですから、
私と家内がけんかしてぶつかっても重力波は出るのですが、
その波の強さはあまりにも小さく、
実際に波が起きていることを証明することは困難を極めます。
とても精密な測定器を作り、波源として、巨大な大波を使って初めて観測が可能です。
今回は、
太陽の30倍もの重さをもつブラックホール二つが合体するという凄まじい
現象が波源になったといいます。
確かに波はとらえられましたが、
本当にブラックホールが合体したかどうかはなにか別の方法で証明しなければ
本当にそうかは分かりません。
大きな質量を持つものが合体するというような激しいことがあれば、
X線などが放射されるに違いありません。
重力波の大波は合体直前の短い時間で起こるものですが、
X線などの放射はもう少し長い時間か続くと考えられます。
ですから、重力波が来たらすぐに重力波源の方向に望遠鏡を向ければ放射が見えるかも
しれません。
日本は国際宇宙ステーションにX線全天監視カメラ(MAXI)をもっていて、
空をパトロールしています。
重力波が出たときも監視カメラが動作していました。
図2は
芹野素子さん(理化学研究所)などMAXIチームが報告した、
重力波到来から4分後から観測が開始され、それから10分後までの映像、
図3は10分から20分の映像です。
あわせて重力波の到来方向(一点ではなく可能性のある領域が帯状にわかっているだけ)
を図に示しました。
残念ながら強いX線は見つかりませんでした。
つまり、重力波源の正体は直接見えませんでした。
それでも、
理論家にとってはどれくらいより暗いかということも重要な情報ですので
この観測はとても重要です。
それより、ちょっと嬉しいのは、
そうやって宇宙のどこかに何か起きないかという
ことが常時観測できる体制があることだと思います。
実際、MAXIは宇宙で起こる不思議な現象をたくさん見つけています。
別の例では、美星スペースガードセンターでは、
人工衛星の打ち上げ時の破片や小惑星などを追跡して監視し、事故が起きたり、
地球に落下してこないか、空を見張っています。
こんなに宇宙を見る目をもった人類はもはや地球人でなく、
宇宙人の一員と言えるでしょう。
すると、 宇宙人として立派な生き方をしたいと思ってしまいます。
他の宇宙人から見て、人類はいいねって言ってもらえるようにしたいですね。
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図1 ブラックホールの合体概念図(提供:LIGO: https://www.ligo.caltech.edu/)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/409-fig1.jpg
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図2 MAXIによる映像(提供:芹野素子(理化学研究所)、MAXIチーム)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/409-fig2.jpg
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図2 MAXIによる映像(提供:芹野素子(理化学研究所)、MAXIチーム)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/409-fig3.jpg
本文終わり
references
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/409-fig.pptx