星の運動を知る(ドップラー効果)

満天の星空を見てその奥行きを感じる人はあまりいない
と思います。しかし、宇宙に関する知識が増してくると
だんだんと星空が立体的に見えるようになって来ます。
あくまでこれは気のせいなので、あまり自慢ができるこ
とではないかも知れませんが、立体的に見えている星空
というのは耐えられないほどの幸福感を呼ぶので、やは
り勉強した方が得です。

とはいっても、確かに暗い丸天井に星が貼りついてみえるのが
普通です。今晩あたり、土星としし座のレグルスが南の
空に並んで見えていますが(本シリーズNo.39参照)、土
星にたいしてレグルスは50万倍も遠くにあるのです。

距離だけでなく、星の運動の様子も調べることができます。
ものすごい速さで遠ざかっている星を天文学者は見つ
けたりしているのです。なので、星空を見たときの立体
感とというのはものすごいものです。

なぜ、そのような星の運動と言うのが分かるのでしょう
か。これは意外と簡単です。救急車などのサイレンの音
が、救急車が近付いてくるとき高く聞こえ、遠ざかる時
に低く聞こえる現象を体験していると思います(図1)。
ドップラー効果と言う名前がついている効果です。

光も音と同じ様に波ですから、星が出す光の振動数にく
らべて、地上で観察する光の振動数は高くなったり低く
なったりします。図2で赤く写っている天体は、日本の国
立天文台のすばる望遠鏡でとらえた非常に遠い銀河の写
真ですが、この光を調べると、本来は水素原子から出て
いる 0.1秒間に2500兆回振動する光が観測では300兆回と、
およそ七分の一になってしまっていることが分かります。
音で言うと非常に低音になっているわけです。図1の救急
車の例で、振動数の下がるのは救急車と聞く人が互いに遠
ざかっていることが原因なのですが、ここでも、この銀河
は非常な速度で私達から遠ざかっているのです。この様
な観測から、宇宙は凄い速さで膨張していることに私達は
気づかされるのです。


図1 サイレンの音は車が遠ざかっていると低音になる。
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/41-fig1.ppt
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/41-fig1.jpg


図2 すばる望遠鏡で見つけたIOK-1とよばれる銀河
(中央で小さく真紅に輝く点)
(国立天文台提供)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/41-fig2.jpg


捕捉

このとき土星までの距離は 9.2AUだった。また、レグルス αLeo までの
距離は 77 ly である。なので、およそ、50万倍の距離の違いがある。

ここで取り上げた「スバル望遠鏡」の成果はくわしくは、

http://subarutelescope.org/Pressrelease/2006/09/13/j_index.html

に掲載されている。
Ly α 1215.6 オングストロームが分光の結果 9682オングストロームで観測された。
したがって z=6.964 になる。
振動数にするとそれぞれ、 2.5x10**15 Hz  3.1x10**14 Hz になる。