福島で活躍コンプトンカメラ
宇宙にある天体からの光は時には何十億光年も彼方からやってくるのでとても微弱です。
100光年先にある地球のような惑星を見つけるのも非常に難しいことです。
ですから、天文学ではいつも、宇宙を知るために人類が持つ最高の技術を使います。
従って,天文学者に測定を依頼すれば地上においても素晴らしい測定が可能です。
そんな例のひとつを、先日、山形大学にみえた早稲田大学の片岡淳先生に伺いました。
光ならばレンズを使ってカメラをつくり映像を撮ることが出来ます。
しかし、放射線はレンズで屈折しませんから、放射線のカメラを作ることはとても困難です。
もし、放射線用のカメラが出来たら写真をとって、
「前方のあの辺りに放射線を出す物体があるぞ」とか放射線源が分かるわけです。
そして、福島の原子力発電所がばらまいた放射性物質のある場所を探知し、
的確に除染することができるでしょう。
片岡先生はX線やガンマ線で宇宙を観測するのがご専門ですが,
同時に放射線のカメラを開発されたのでそれを今日は紹介しましょう。
放射線(ここではガンマ線を測定します)が図1(上)のピンポン球のように台のAの点で跳ね返り、
Bのところでキャッチしたとすると、Aの位置とBの位置を検知できれば、
ガンマ線(ピンポン球)の到来方向がすぐにわかり、つまり放射線源の方向がわかります。
しかし、現実はもう少し難しい問題を解かないといけません。
ガンマ線の反射は電子という微粒子で起こるので、この絵のように反射面が確定していなからです。
そこではじき飛ばされた電子のエネルギーとキャッチしたときのガンマ線のエネルギーを測定する
ことで、図1の下の図の赤い点線のが飛来方向として計算できます(円のどこかまでは残念ながらわかりません)。
たくさんの候補円を描いて最終的に放射線源を特定します。
コンプトンカメラと呼ばれるカメラです。
図2は福島県の浪江町でとられた映像の例です。たしかにガンマ線の放射源の分布が分かりますね。
現在、森林の中での放射性物質の分布の特徴を探査する計画が進んでいるそうです。
ガンマ線を出す天体を探すこととガンマ線を出す除染対象物質を探すことは同じです。
自然の原理というのは人類のことは何も知らないでどっかと横たわっている感じがしてこういうことが私は好きです。
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図1 コンプトンカメラの原理
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/426-fig1.jpg
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図2 放射性物質の分布を示す片岡淳教授らのグループが開発したコンプトンカメラの映像(提供:片岡淳ほか)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/426-fig2.jpg
本文終わり
references
パワポ
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/426-fig.pptx