地球が火星を追い越す
オリンピックですね。
陸上の中距離走で内側のランナーが外側のランナーを追い越すシーンをイメージしてみてください。
ちょうど図1のようです。
今年の5月31日に地球と火星は最も接近しましたが、
その後、図1のように地球が火星を追い越し、
現在、日に日に火星は後方に引き離されてゆきます。
この様子がとてもよく見えるので夜空を観察してみましょう。

ただし、地球が追い越すのは、一生懸命に努力をしたというわけでなく、自然の法則です。
火星にくらべて地球はより太陽に近いところに位置しています。
その結果、太陽からの引力を強く受けます。
太陽からの引力に吸い込まれないように,地球はすごい早さで公転して、
その遠心力で太陽からの引力に負けること無く、
一定の半径を保つことができているのです。
(公転の速度は秒速約30kmもあります。)
火星も同じことなのですが,火星は太陽から遠いために、太陽からの引力が少ないので、
そのぶんだけ公転速度は少なくても良いのです。
しかも、大きな半径で回りますからずいぶんと地球よりはのんびり回っていても太陽に吸い込まれることはありません。

さて、では実際に火星が後方(東向き)に見え方が変わる様子を観察してみましょう。
結構、早いのでちょっとびっくりするのでないかと思います。
夏休みの自由研究のテーマとしてもよいでしょう。
最近のカメラの性能はとても良いので、写真を撮ることもできます。

図2のように見えます。
さそり座の心臓のアンタレスという一等星とその上の土星を結ぶ線を想像します。
今晩は、この線の右側に明るい火星が見えます。
この三つの星は非常に明るいので確実に見えます。
さそり座のしっぽにあたる「うおつりぼし」の形や、
左側のいて座の「ティーポット」の形を見つけるとよりはっきりします。

毎週観察していると、アンタレスと土星を結ぶ線を見事に火星が横切ります。
図2では、一週間ごとの位置を赤い+でしめしています。
だれでも気がつく明らかな変化ですのでぜひ観察してみてください。
そして、秋には遠く東の方向に去って行きます。







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図1 地球が火星を追い越す http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/429-fig1.jpg
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図2 火星の動き(日没後、暗くなったら南の空をご覧下さい) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/429-fig2.jpg
本文終わり
references パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/429-fig.pptx