冥王星からのX線
冥王星という星の名は、
私が子どもの頃は太陽系を巡る惑星の一つとして知りましたが,
現在は冥王星は惑星とは認められていません。
今の子どもたちの世代には忘れ去られる運命の星かも知れません。
冥王星まではとても遠くて、地球と太陽間の距離の約40倍の距離にあります。
光で行っても5時間半もかかる遠いところにあります。
一方、直径は2370kmと月よりも小さいサイズです。
ですから地球からみるとあまりに小さくて,
人類の持っているどんな大きな望遠鏡を使ってもその詳細は知り得ません。
最低でも10km先にある1ミリの模様を見分ける倍率が必要です。
しかし、ニューホライスンズという探査機が8年もかけて冥王星に到達し、
凍えきった岩石でできた冥王星の姿を地上に送ってきました(図1)。
最近、地球軌道上にあるチャンドラX線望遠鏡で冥王星を調べたところ、
強いX線を冥王星が発していることがわかりました(図1の囲み)。
しかもそのX線で光る雲は冥王星の直径の50倍も大きなものでした。
これは予想外の現象で、天文学者はびっくりしました。
太陽から吹き出した粒子の流れ(太陽風と呼びます)が冥王星にまで到達し、
冥王星と衝突してX線を出したものと理論研究者は考えています。
私たち自身が冥王星に行くことは決して出来ません。
しかし、冥王星からのX線を見ることで、
そんなに遠い冥王星でおこった小さな衝突を感じることができました。
行きたくても行くことができない思い出の町に雨が降っていて,
その雨の音を聞くことは決して無くても,
もしそこにいればきっと聞こえているのだろうなと思うことがありますが、
それと似た感覚です。
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図1 ニュー・ホライズンズがとらえた冥王星とX線でみた冥王星(提供:NASA)
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/435-fig1.jpg
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