はくちょう座X-3の小さなともだち
スミソニアン天文台のマクローラらによる報告によると、
「はくちょう座X-3の小さなともだち」と名付けられた天体の正体がわかったそうです。

図の中央の白く輝いている星がはくちょう座X-3とよばれるX線星です。
まるで呼吸するように4.8時間の周期で明るくなったり暗くなったりします。
明るさが変る原因は、はくちょう座X-3というのは実はひとつの星ではなく、
二つの星が互いにまわりあっている連星になっていて、連星の公転周期が4.8時間
であるからです。

今日の話題は「はくちょう座X-3の小さなともだち」とよばれる
すぐそばにあるX線星(白く見える部分)です。
このニックネームがついた理由はふたつあります。
第一にすぐそばに寄り添うように見えること。
視力4の人でないと見えないくらい接近して見えます。
もうひとつは、
このふたつの天体が申し合わせたように同じ周期4.8時間で明るくなったり暗くなったりすること
にあります。

ふたつの天体は非常に接近して見えていますが,実際ははくちょう座X-3までの
推定距離は地球から2万光年ほどで、「小さなおともだち」のほうはさらに数千光年
先にあります。
二つの天体は見た目は非常に近いのですが、
奥行き方向に数千光年の距離の隔たりがあります。
そんなに離れているのに、なぜ二つの明るさの変化の周期が同じなのでしょう。

はくちょう座X-3のX線が非常に強いので、そのX線が「小さなお友達」で反射され
地球で見えているのです(図2)。

では「小さなお友達」自身はなにかというと密度の濃い、チリをいっぱい含んだ
ちいさな暗黒星雲でした。この中では星が産声を上げているところで、
その証拠に、出来たばかりの赤ちゃん星に特有の双極ジェットとよばれる
二方向に伸びたガスのながれが観測されました。
図1の青で示したのが私たちに向かってくるジェット、赤で示したのが私たちから逃げる方向にながれるジェットです。

はくちょう座X-3のX線星は星が死を向かえた最後の段階。
「ちいさなお友達」の方は誕生したばかりの星。
おじいちゃんと孫が並んでいるようで、それが、おともだちというニックネームになっているのもまた微笑ましい姿です。


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図1 はくちょう座X-3とその小さなお友達 (提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/448-fig1.jpg
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図2 はくちょう座X-3のおともだちの説明図 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/448-fig2.jpg
本文終わり
references McCollough, M.L., Corrales, L. \& Dumham, M.M. 2016, arXiv:1610.01923v1 to be appear in Astrophy J. Letters. パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/448-fig.pptx