平凡原理
宇宙に地球のような惑星があって、われわれ人類のような知的な生命が誕生するのは非常に希有なことなのでしょうか。
人類が宇宙のなかで特別な存在だ、と思うのは思い上がりで、
広い宇宙で人類のようなものが誕生するのは極あたりまえのことだとの考えを「平凡原理」といいます。

たとえば、水です。
宇宙の中で一番多い元素は水素で、次に多いのはヘリウムです。
ヘリウムは化学反応をほとんどしません。
ヘリウムの次に多い元素は酸素です。
すると、酸素と水素が一番宇宙にはたくさんあって、それが結合してできるものは水です。
水と酸素は宇宙でもっとも平凡な物質であることは明瞭です。
生命はもっとも平凡な物質を使って生きているわけで,これは平凡原理に沿っていますね。
平凡原理を信じたくなります。

夜空を彩る星(恒星)たちのほとんど全てに惑星が付随していることが明らかになっています。
その恒星から適当な距離に惑星ができれば、
地球のような水の惑星ができるのも、
人類のような知的な生命体が発生するのも、
宇宙の中では平凡な出来事という気がして来ます。


しかし、私のような平凡原理が好きなものに取っては火星の現状は厳しいものがあります。
火星には確かに大量の水が流れた痕跡があり(図1)、
南極や北極には氷があったという報告があります。
火星表面を動き回って調べるロボット「キュリオシティー」の車輪に挟まれた岩石が割れ(図2)、
その断面に現れた白い鉱物に水が含まれていたとこが確かめられました。
新しいクレータをたくさん調べて水の有り無しを地図にしたのが図3です。
水色に塗られたクレータには氷がありましたが、中緯度や赤道の茶色にぬられたクレータは氷はありませんでした。

水の惑星になりかけたけれど、もう一押しのところで火星はそうならなかったようです。
水の惑星になる条件はなかなか厳しそうです。
すると簡単に平凡原理を持ち出してはいけないことになりますね。




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図1 マーズ・エクスプレスによる火星表面の映像 (ESA/DLR/FU Berlin) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/451-fig1.jpg
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図2 キュリオシティーによる火星の岩石(NASA/JPL-CALTECH/MSSS) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/451-fig2.jpg
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図3 2001マーズ・オデッセイによるクレータ探査結果(NASA/JPL-Caltech/Arizona State Univ.) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/451-fig3.jpg
本文終わり
references パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/451-fig.pptx