かに星雲
図1は「カニ星雲」とよばれる天体で、昔の望遠鏡でカニの姿に見えたのでそんな名前がついています。
綺麗ですね。

この色は疑似カラーと言って本当の色ではありません。
重要な点は綺麗に見るためにこのようにカラフルにしているのではなく、
研究のためにこのようにしています。

この画像を作るために5つの望遠鏡が使われています。
まず、VLAとよばれる電波望遠鏡で得た画像に赤色を割り当てます。
次にスピッツアー(Spitzer)とよばれる望遠鏡で撮った赤外線の画像に黄色を割り当て、
ハッブル(Hubble)望遠鏡の可視光線の画像に緑色を、XMM望遠鏡の紫外線画像に青色を、
最後に、チャンドラ(Chandra)という望遠鏡によるX線画像に紫色を割り当てます。
5つの違った色の画像を重ね合わせて図1の画像が作られています。

電波も赤外線も紫外線もX線も人間の目には見えませんのでこの画像の色は目で見たものでなく、
全くの偽造色ということになります。

電磁波はその振動数(波長、エネルギーといってもいいのですが)によって、出世魚のように
呼び名が変わります。
振動数の低い(波長の短い、あるいはエネルギーの低い)電磁波は電波と呼ばれますが、
振動数が上がるに従って、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線と名前を変えます。
そして各振動数によって発生原因が違うことも多いのです。


この画像は綺麗ですが観賞用ではなく、先月発表された研究論文に基づくものです。
たとえば、電波で光っているところ、X線で光っていることろのずれなどから、
この星雲の光っているガスの起源がひとつではなく、複数であることがわかります。
どのような仕組みでこんな妙な形の星雲ができたのでしょう。
それを解明するためにはこのようにいろいろなエネルギーの電磁波での観察が重要なのです。
画像の違いから発生機構を考察するわけです。
この星雲は謎が多く、まだまだよく理解されているとは言い難い天体です。





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図1 最近発表されたカニ星雲の画像(提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/467-fig1.jpg
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図2 図1のために使われた5つの望遠鏡(提供:Nationa Radio Astronomy Observatory (NAO)、NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/467-fig2.jpg
本文終わり
パワポ http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/467-fig.pptx references will be note-467