マルチメッセンジャー天文学
今年の流行語大賞にマルチメッセンジャー天文学が選ばれないかと密かに願っています。
メッセンジャーとは使いの者。
生物には、遺伝子をはじめ数知れないメッセンジャー物質が存在し、
私たちの生命を支えてくれています。
宇宙からやってくるメッセンジャーもマルチ、
つまり多様になってきたという話題です。
ことの発端はGW170817という名前がついた重力波が地球に届いたことにあります。
重力波が伝えてきたメッセージとはこんなことです。
二つの中性子星が互いに回り会い、重力波としてエネルギーを放出しながら、
互いに近づき、やがて合体したというのです。
この間、重力波の振動数が増加します (図上のパネル) 。
約2秒後、ガンマ線バーストというガンマ線のフラッシュが観測されました。
人工衛星として地球の回りをめぐるフェルミ望遠鏡です。
合体した中性子星が、ブラックホールを作りながら、
同時にほとんど光の速さで二方向にガスを吹きした結果、フラッシュが見えました。
重力波とガンマ線というふたつのメッセンジャーですね。
その二時間後、次に、ハッブル望遠鏡など可視光線、赤外線などの望遠鏡つぎつぎに動き出し、
重力波を発生に関わった光をある銀河に捉えることに成功しました。
これらの光は、合体した中性子星の破片が金のような重い元素を合成させたことの証拠を与えてくれました。
宇宙における元素合成のメッセージが、赤外線、可視光線、紫外線に含まれていたのです
(図の下のパネル)。
爆発のあった銀河が特定できたので、それが約1億光年の距離になることもわかりました。
重力波をよくみると、
中性子星が接近するとともに徐々に変形する様子がわかります。
その変形の様子から、
中性子星を作る物質がどんな構造をしているかも探査できます。
昔からの天文学の観測方法と
最新の重力波観測を組み合わせて、
宇宙からの多様なメッセージを解読する時代がやってきたのです。
ワクワクする時代です。
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図1 宇宙からのマルチメッセンジャー
水色の矢印が中性子星合体のときの爆発の光
白の矢印が合体が起こった銀河の中心部
(提供:カリフォルニア工科大学 http://growth.caltech.edu/news-gw170817.html )
http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/505-fig1.jpg
本文終わり
パワポ
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references will be note-505