宇宙への関心
人間はただ生きるため、
食べるためだけに自然を観察してきたのではないと思います。
自然観察や実験して試すことで、美味しい食べ物を見つけたり、
毒のある食べ物を避けたりすることができるようになり、
さらに、
植物を栽培したり家畜を飼うことを考案しました。

昨年、多賀城市にある東北歴史博物館で開かれたラスコー展を見てきたのですが、
自然観察の結果は、
この壁画のように芸術作品としても結実していました
(図1)。
これは1万年から2万年前の旧石器時代の人類が残したものです。

きっと自然観察は夜空にも及んでいたでしょう。
石器時代の人々も、
ちょうど今、私たちがみている異常に明るい赤い星、火星、をみつけて注目したでしょう。
形と位置を毎日変えていく月も見ていたはずです。
恐怖心で見ない様にしていた人もいるでしょうが、逆に、一生懸命に観察した人もいるでしょう。

紀元前3000年ころのシュメール人は星座をもっていて暦もあったと考えられています。
ラスコーの壁画をみているとこれだけの自然観察力と表現力がある人々なら、
旧石器時代でもすでに宇宙に関心のある人々が何かの記録を残していたのでないだろうかと思えてきます。

そう思って調べていて、
マーシャックという人の書いた「文明の起源」という本に出会いました。
図2がそこに出てくるアフリカ、コンゴのイシャンゴというところで見つかった旧石器時代の骨です。
紀元前6500年くらいのものと推定されています。
ここには意図的と思われる線が刻まれています。
骨をぐるっと巡る様に三列の縦線が並んでいます。
線がグループ化されていてるのが不思議です。
各グループの本数が11,13,17,19といった具合で、
素数になっているので、
なにか数学的な意味があるのではとう説もあります。

マーシャックは、これを新月から半月(上弦)、満月、半月(下弦)、そして3日ほど月が見えない日が続いて、
また三日月が現れるという月の満ち欠けの記録でないかという説を述べています。
彼は同じ様な解釈が可能なマーク付けされた骨を多数発見しています。

この解釈の真偽のほどはわかりませんが、
月の満ち欠けは非常に認識しやすいことは確かで、
古代文明の多くに太陰暦が誕生しています。
いつかどこかできっと
確実な原始的な暦の遺物が発見されるのでないでしょうか。


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図1 ラスコーの洞窟壁画(撮影:柴田晋平、昨年5月、東北歴史博物館にて) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/532-fig1.jpg
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図2 イシャンゴの骨(A.Marshack 著,"The Roots of Civilization"より) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/532-fig2.jpg
本文終わり
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