江戸時代の物理学者?
天文学で重要な力は重力です。
惑星の運動を支配するのは重力ですし、重力が原因でブラックホールができます。
もっと身近に太陽が丸くまとまった形になっているのも重力のおかげです。

重力が詳しく検討されたのは落下運動だと思います。
図1のAのようにボールを静止状態から放つと落下し、落下速度はどんどん加速します。
水平に初速を与えると図のB,C,Dのようになります。
落下運動は初速ゼロのAの場合と同じですが、水方向についてはじめに与えたのと同じ速さで動きます。
結果が図のような放物運動という軌道を描きます。
数学的には二次関数になります。
鉄砲の弾も勢いよく出ますが落下運動を伴うので放物運動を示します。

このことはすでに江戸時代に砲弾の軌道研究から明らかになっていました。
図2は稲富一夢による砲術の研究書の一部です。
山田正茂が書いた「改算記」(1659)では、砲弾の道筋が
直線でなく放物線で表されているそうです。
日本の数学(和算)は非常に優れており、
二次方程式も解けていましたので放物軌道を正しく記述することができたのです。
ガリレオの放物線の軌道の発表は1638年ですから、
それからたった21年の遅れで日本でも独立に放物線軌道の理論ができていたということになります。

しかし、これからが厳しい道のりでした。
この重力による作用で放物運動になることを運動方程式で表したり、
重力が地球と物体との万有引力に起因することまで見抜くことは日本ではできませんでした。
これらは、1687年にヨーロパで、ニュートンによってまとめられました。

地上実験で運動法則は解明可能ですが、重力に気がつくためには惑星の運動など宇宙を見ることが必要です。
人類は宇宙を見ることで物理の基本法則を見つけてきました。
皆さんも宇宙・星空を眺めながらいいアイデアをひねり出してみてください。




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図1 放物運動 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/541-fig1.jpg
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図2 江戸時代の砲術伝書のひとつ「三十三相の筒堅図」にある図。 (著者は稲富一夢、学習院大学蔵) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/541-fig2.jpg
本文終わり
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