もっとも最近生まれたパルサー星雲
図1はチャンドラX線望遠鏡で得られたパルサー星雲(水色の部分)の画像です。
なんと、毎秒1000kmで膨張していることが16年に渡る長期観測からわかりました。

図の見方は図2を参考にするとわかりやすいです。
まず、星が最期の大爆発をしてその爆風が作る大きな泡のようなものが作られます。
これを超新星残骸と言って両方の図で紫色の部分です。
図2では理想的な球体をイメージしていますが、現実の世界では、爆発が完全な球でなく歪んでいたり、
爆風が広がる周りも一様ではないので、図1のように明るいところと暗いところができます。

爆発の後に、中性子星あるはパルサーと呼ばれる小さな天体が残ります。
それが図の白い丸です。図1では中央に白く写るX線星として見えています。

パルサーはパルサー風という高エネルギーのガスを吹き出していて、
パルサーの周りに星雲を作ります。
これが図の水色の部分です。
これをパルサー星雲と呼びます。

このほど発表された研究ではこのパルサー星雲が毎秒1000kmで膨張していることがわかかりました。
この結果から逆算すると、爆発は約500年前ということになります。
場所はわし座で彦星の近くですので目立つ位置と言えます。
戦国時代に誰かが爆発を見ていないかと思われますが、記録は残っていません。
おそらくこの方向の天の川には光を吸収するダストが多い性で暗かったのでしょう。
X線は透過力が強いので見えています。

この天体には不思議なことが幾つかあります。
パルサー星雲がこの10年ほどで30%も暗くなったのですが、理由が膨張では説明できません。
中心にあるパルサーは2006年にX線で増光したのですが原因が不明です。
パルサーの磁気は普通1兆ガウスくらいですがこのパルサーは10兆ガウスを超えます。
どんな超新星爆発があるとこんな強い磁場になるのでしょう。これもわかってはいません。
宇宙の不思議は尽きないですね。



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図1 チャンドラX線望遠鏡による超新星残骸Kes 75の画像(提供:NASA) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/544-fig1.jpg
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図2 Kes 75の構造の概念図 http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shibata/yamashin/544-fig2.jpg
本文終わり
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