フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が打ち上げ 今年6月12日に新しい宇宙望遠鏡が打ち上げられ、早 くも全天の地図を8月26日に公開しました。新しい望遠 鏡の名前は「フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡」といいま す。この名前は有名な物理学者エンリコ=フェルミに 由来します。フェルミは宇宙における高エネルギー粒子の 起源の理論を打ち立てた人です。今後新聞紙上にこの 名前が出てきて、新しい宇宙の姿を見せてくれると 思いますので、心の隅にこの名前を覚えておいて いただければと思います。 この宇宙望遠鏡はちょっと変わった望遠鏡です。それは、 普通の光(可視光線)よりも2千万倍から3千億倍のエネルギーを 持った光(ガンマ線)で宇宙を「見る」望遠鏡です。 可視光線でなくてガンマ線を出している星や星雲を見る 望遠鏡です。視野が非常に広いのであっというまに全天 の地図を作り上げてしまいました(図1)。 ちょうど世界全図のように描いてあります。楕円形の 中央の水平な線が天の川の中心線です。たとえば宮沢 賢治の「銀河鉄道の夜」の銀河鉄道は天の川に沿って、 はくちょう座から南十字座に走っていますが、その線 も図のなかに線であらわしておきました。世界図の北極と 南極の位置にあたる N と S は、それぞれかみのけ座 とちょうこくしつ座の方向になります。 図をみると天の川がガンマ線でよく光っていることが わかります。それ以外にガンマ線で光っている星があ ります。ガンマ線で光っている星の多くは「パルサー」 とよばれる中性子星や「活動銀河核」とよばれるブラ ックホールです。 パルサーが光るのは、これが巨大な宇宙発電機になって いるためです。10兆ボルト位の電圧で発光します。 ブラックホールが光るのはブラックホールに物質が吸い 込まれる前に激しくぶつかり合って発熱するためです。 1億度から10兆度にも高温になります。このような 宇宙におけるもっとも激しい現象をとらえることができる すごい望遠鏡が働き始めたのです。 図1 フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が作った全天のガンマ線地図 (NASA提供)