宵の明星 金星が宵の明星として見えるようになってきました。日が 沈んでしばらくすると南西の空低く、「もしかして人工の 光り」と思うほど明るく不気味に光る点が見えると思いま す。金星です。大体の見える位置は図1に示したようです。 ちょうど日没の時刻では、腕をまっすぐに伸ばして、ゲン コツを作り、ゲンコツの下辺を地平線にあわせて、ゲンコ ツでひとつ半からふたつ分の高さに見えるはずです。日没 は、10月27日でしたらちょうど午後の五時ころ、11 月中旬なら午後四時半ころです。時間の経過とともに高度 が低くなり、日没から一時間と少しで、金星も地平線の下 に沈んでしまいます。 南の空のやや西より、金星より左側に木星があるので間違 えないようにしましょう。こちらの方も高度はそれほど高 くありませんが金星よりは高く見えます。例えば、午後7 時とか八時に西の空に見えているとすればそれは金星でな くて木星です。木星と金星の区別がつくかどうか、夕方の 空を注目してください。 星座を作ったメソポタミア(今のイラクのあるあたり)の人 々は星座の中を動きまわる7つの惑星に注目し、神さまの 宿る星と考えていました。当時は太陽の回りを惑星が回る と言うような考えは毛頭ありませんでしたから、7つの惑 星とは、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星のこと です。つまり、曜日にあらわれる、日、月、火、水、木、 金、土がまさに7つの惑星です。 そのうち、金星は愛と美と豊饒をつかさどる美女の女神イ シュタルが宿る星でした。金星のこのキャラクターはギリ シアや、さらに、ローマ神話にも受け継がれ、英語で金星 を意味するヴィーナスという名前にそれがあらわれていま す。 金星でもうひとつ覚えておくとよいことはそのサイズが地 球とほぼ同じと言うことです。地球の半径は6378kmですが、 金星は6052km でほぼ同じ大きさと言ってよいでしょう。 太陽の前を金星が横切る現象が2004年6月8日に見られまし た。このときの写真を図2に示しましたが、これを見ると 金星、そして、地球と太陽の大きさの違いがよくわかりま す。この写真から太陽の直径を推定してみませんか。 図1 金星の見え方(2008年10月から11月にかけての日没時の金星の位置) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/60-fig1.jpg 図2 金星の太陽面通過の様子 (2004年6月8日 14:31 オーストラリアシドニー大学物理学科屋上でで柴田が撮影) http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/~shiata/yamashin/60-fig2.jpg