横に逃げよ
強い誘惑に駆られたがどうしてもそこから逃れたいときどうしますか。
その引力はあまりにも強く抗しきれない時。
私の好きな格言、「世の中思い通りにいかないけれど、物理法則通りに行く」
に従うと、
方法はただ一つ、
無理に引力に抵抗せず、横方向に逃げるのが良いです(図1)。
横に移動するには力はほとんど要りませんから簡単です。

この考えはニュートンによって完成された力学によるものです。
全ての物体は放り投げると落下しますが、
落下を避けるためには、上向きの力を用いなくても、
横方向に速度を持てば落下しないですませることができます。

図2のように、 速度がたりなければ結局は落下しますが、
地上であれば毎秒およそ8kmの速度をもてば、
逃げ切ることができます。
実際に月は地球からの引力を受けながらも
ちょうど逃げ切る速度をもってまわっているので、永遠に地球に落下することなく
地球の周りを周り続けます(図3)。

この理屈は、1665年にロンドンでペストが大流行したとき、
故郷の村にこもって研究に集中していたニュートンによってなされたそうです。

ニュートンの理論の価値をいちはやく察知し、
その出版を後押ししたのが、ハレーという人です。
ハレー彗星で有名なハレーです。
ニュートンの理論によれば楕円軌道をして繰り返し現れる彗星がありそうでした。
そこで、ハレーは過去の観測をたくさん集め、
24個の彗星の軌道を解明しました。
ハレーによって1758年に再来が予言された彗星が実際に予想通り現れたため
とても有名になりました。ハレー彗星と現在呼ばれている彗星です。
残念ながらその15年前にすでにハレーは亡くなっていました。

ハレーはまた、ニュートンの研究をまとまった書物として出版することを勧め、
また出版を援助しました。
ニュートンの研究はプリンキピアとして
全3巻が発刊されたのでした。
1687年のことです。
そして18世紀は天体力学の最盛期の時代になっていきます。


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図1 横に逃げるべし! http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/622-fig1.jpg
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図2 落下と横向きの速度との関係 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/622-fig2.jpg
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図3 月の運動 http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/622-fig3.jpg
本文終わり
パワポ http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/622-fig.pptx