地球の夏は暑い?
猛暑の夏がやってくると、「あれっ、地球という惑星は生物が住む
のにちょうどよい温度になっていたはずなのに。」と思ってしまい
ます。
惑星の温度は、太陽から受ける放射エネルギーによって、つまり、
太陽からの距離でほぼ決まります。太陽に近い金星は暑く、地球は
ちょうどよく、火星は太陽から遠いので寒くなります。実際、太陽
から受けるエネルギーと惑星から出る赤外線放射がバランスする条
件で平衡温度を計算することができます。この平衡温度が地球では
生物にちょうど良いところに来るということを学校で習いました。
しかし、現実はそう簡単ではありません。金星は太陽に近いのです
が平衡温度は地球のものより低く摂氏マイナス49度くらいです。こ
れは金星の上層にある雲が非常に反射率が高くて太陽からの光の
78%ほどを反射してしまうためです。一方、火星はどうでしょう。
今晩、10時過ぎに東の空を見ると実際に火星が見えているので
是非ご覧ください(図1)。その赤い色と明るさで見逃すことはないで
しょう。火星は大気が薄くてほとんど透明なので、火星表面の赤土
がそのまま地球からみえているのです。この赤土は、金星とは逆に
太陽光を吸収しやすいので、太陽からの距離の遠いわりに火星表面
の温度は高くなれます。それでも平衡温度は摂氏マイナス57度ですが。
さらに、大気があるので話は複雑です。火星には大気がないので放
射冷却が著しく夜の温度がすごく下がります。地球でもよく晴れた
夜には放射冷却で気温が下がることはみなさんご存知と思います。
金星は確かに太陽の光を反射する雲があるので、雲の上は気温が高
くありませんが、地表面は700度にもなります。これは金星には二
酸化炭素の濃い大気があるため、非常に強い温室効果が起こるから
です。
地球の温度も同じように考えると、太陽からの距離がちょうどよい
とはいうものの、平衡温度は摂氏マイナス18度です。そこに温室効
果と反射率など多数の要素の調整があって現在の住みやすい温度が
実現しています。例えば、表面を覆っているのが海や森林が多いの
か、砂漠が多いのか、また、大気の二酸化炭素などの温室効果ガス
がどのくらいの量なのかなどによって地表の温度は変化します。
科学の発展によりこのようなメカニズムを私たちは知っていますし、
メカニズムを知ってコンピュータシミュレーションもできるよ
うになりました。知恵を絞って、暑さ克服の方法を見つけ出し実践
したいですね。
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図1 今晩夜の10時ごろ東の空。
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/633-fig1.jpg
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図2 金星、地球、火星 (提供:NASA)
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/633-fig2.jpg
本文終わり
パワポ
http://www.shibatashinpei.jp/lib/yamashin/633-fig.pptx
references will be note-633
see 633-ref1.pdf
see 633-ref2.pdf